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織物技術の歴史
「織り」は、旧石器時代に行われていたそうです。初めての織機は、経糸の端に錘を付けてぶら下げる竪機で、技術が発達し竪機や水平機が出来ました。 中国では紀元前3500年頃には絹織物の生産が始まり、紀元前2700年頃の墳墓から精巧な染織品が発掘されています。養蚕は、紀元前200年頃に朝鮮半島や日本列島等に伝わったと考 えられています。

例:チェコのドルニ・ベストニツェ遺跡では、不明瞭ながら織物の圧痕が発見され、トルコのチャタル・ヒュユク遺跡から紀元前7千年紀の織物が発見されたそうです。またエジプトでは、紀 元前5000年頃のファイユーム出土の亜麻織物の断片や紀元前3000〜2000年の衣類等が発見されているそうです。

1)ヨーロッパでの織物産業
1425年頃のヨーロッパでは、羊毛が主要な動物繊維原料で、その他には亜麻やイラ草 等の植物繊維原料が使用されました。また、9世紀にシリアやスペインに木綿が伝わり、1 2世紀ノルマン人が南イタリア征服した時期に木綿がヨーロッパ全域に広がりました。その後、東方から絹織の技術が流入した事により織物の技術に変化が加わりました。10世紀から11世紀 にイスラム圏から足踏み式の水平織機が導入され、13世紀に問屋制家内工業体制が 確立します。そして、16世紀イングランドでは囲い込みや、都市のギルドの制約を受けない農村での集約的な毛織物生産が発達し、工場での手工業へ移行して行きます。17世紀後 半にはイギリスやドイツで毛織物業や絹織物業が発展しました。そして、1733年ジョン・ケイが、「飛び杼」を発明した事で生産性を大幅に向上させ、1761年ブリッジウォータ ー運河の開通した事でマンチェスターへの木綿運搬が増大し、豊富な水資源を背 景に水力を用いたジェニー紡績機やミュール紡績機等が開発され、次第に紡績が機械化されていきます。フランスでは、1801年頃にジョゼフ・マリー・ジャカールによって、複雑 な文様の織り出しを自動化したジャカード織機が発明されました。この機械は、パンチカードを使ったジャカード 織機で加えて非常に複雑でしたので普及には年月を要し、1820年頃ようやく実際的な力織機の開発が始まりました。
2)その他の織物産業
中東各地の伝統工芸品として、手織りのペルシャ絨毯やキリム・イランのファールス・カーシャーンの絨毯織りの技術・アゼルバイジャン絨毯・ベドウィンの女性が織るアッ・サドゥ(ユネスコの 無形文化遺産)・ケルマーンやアラークの製品が代表的です。
南アジアでは伝統的染織が発達し、大航海時代に南アジアの織物がヨーロッパや世界各地にもたらされ、各地の服飾や織物産業に大きく影響を与えました。現在でも手織・力織ともに重要な産業です。 バングラデシュのジャムダニは、精巧な綿織物技術でユネスコの無形文化遺産に登録されました。