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ケンネル撚りは、糸が互いにしごき合う事によって抱合が良くなり、丸い糸になります。しかし、天蚕のような毛羽立ちやすく、セリシンが少なく分繊しやすい糸に、 無理してケンネル撚りを掛ける事は、繭の解じょ(糸のほぐれ)の悪さも加わり、繰糸を一層大変な作業にします。 そこで我々は糸の抱合の問題は、実際の織物に天蚕糸を使用する上で、全く問題にしなくても良く、県の指導の方が家蚕生糸検査の感覚で指導されても、使用する我 々が良いといっている了解のもと、ケンネル撚りなしで鼓車(こしゃ)を通しただけで、できるだけ繰糸される繭と、巻き取る小枠の距離を長く取る事に注意して、鳥 取では繰糸していただきました。 抱合の良くない糸になりましたが、使用するにあたり問題は全くありません。以前にくらべ、繰糸しやすくなった事は言うまでもありません。 糸の緑色も指導の方が言われるほど、今のところ重要ではありません。なぜなら、千葉県の蚕業センターで拝見した信州の高沢織物さんの緑を残した精錬糸は、すば らしい糸でしたが、一般に今使われている織物の精錬では、あの美しい緑色は全く残っていません。我々が必要とする緑色でしたら、色は重要な事なのですが、むしろ 今の精錬方法である限り、緑色は生かせません。その分、繭色のうすい物の有効利用を考えての繰糸が、糸のコストダウンにつながると思います。 ケンネルに変わるものとして、将来的には玉糸座繰に使われている「つつみ」を通しての方法が、天蚕には一番適していると考えています。この方法での糸は、玉糸と 同様に扁平になります。扁平糸も家蚕生糸基準から見ればだめな糸という事なのですが、小谷さんと私の考えはむしろ逆です。今の天蚕糸の使用方法である限り、全く 問題は生じないと経験からいえます。 天蚕糸と非常に似ている糸質の中国の柞蚕糸、その一つの繰糸方法での柞蚕水繰糸(さくさんすいそう)は扁平であり、もう一つの繰糸方法である机上繰糸方式での 柞蚕葯水糸(さくさんやくすいし)は、抱合は悪く分繊した糸ですが、風合いが良くやわらかい糸です。 この「つつみ」を使っての繰糸試験は、今年三月に交流ができました神奈川県蚕業センターと今年の天蚕繭で、試験を御願いできると思います。 (ハ)接氏iせっちょ) 繰糸している時、繭が落ちて細くなった時に、繭糸を付ける事を接獅ニいいます。 鳥取や岡山は、手なげによる接歯式です。これは、セリシンが少ない天蚕には向いているとは思えません。まして、はじめての方には大変な技術です。その点、 千葉や神奈川県のような蚕業センターが指導された繰糸機は、手本が自動繰糸機であり、回転接至が当然のように付いています。 回転接至は回転する羽のところに繭糸を持って行けば、自動的に接獅オてくれる便利な装置です。岡谷で毎年、生繭の座繰生糸をお願いしている製糸さんで、 天蚕糸も繰糸経験のある宮坂さんのご意見でも、回転接至は、はじめての方にとっても技術もいらず、楽に接獅ナきる理想的な装置という事でした。 |