戻る 次へ


 穂高の糸が、すべて穂高産の繭ではありません。各地の繭を穂高で繰糸してできた糸もあります。繭代金と繰糸代金を計算し、糸の 上代価格を計算した時、穂高の糸は高すぎると私は思っています。そこに穂高の産地ラベルが付くから、穂高産の糸は希少性で高価格が維持で きます。それと同じことを織物業もしているように思います。天蚕を使っているから、超価格の糸だから、超価格の織物になる。 その答えは織物をお買いになる方が、決めていただけると思います。そのために、作品を多くの方々にご覧いただき、評価していただける機 会をできるだけ多く作る事、それが私の今の役割だと思います。 そうなった時にはじめて、天蚕の糸そのものの持つ価値で、天蚕が評価されると思います。そこからしか、天蚕の将来は開けないと思います。


8、天蚕の副蚕糸

 繭の中には出ガラ繭、うす繭、よごれ繭、繰糸前の上皮や、繰糸後の内層など、繭の総数が多くないためほとんど未利用です利用にための試 作も、繰糸の方の研究が第一でこの方はあまり研究されていません。 家蚕同様、真綿にして天蚕紬糸ができれば、また新しい可能性が生まれます。
 出ガラ等の副蚕は、各地域では数量が少なくて、実験で終わってしまいます。できるだけ多くの副蚕を集めて、大量試験をしなければ、実用 化にはほど遠い結果になります。
 出ガラ繭等は、鳥取をはじめ宮崎県椎葉村、宮崎県総合農業試験場蚕業部、岡山県立農業試験場北部支部、岩手県庁農蚕課を通じて岩手大学 農学部応用昆虫研究室、千葉県蚕業センターの協力をえて、友人の倉谷礼子さんに精錬試験をお願いしました。
 洗濯ネットに入れて、酵素や灰汁にて一日以上の時間をかけて、ゆっくりと精錬をすすめるのがポイントです。そのデータを持ちプロにお願 いしました。プロは早く処理することを考えます。当然、最初は繭くずれし、未精錬の部分が残り、失敗です。しかし、一応大量精錬の目どは 立ちました。
 次の紡ぎで止まっています。信州の真綿紡ぎのプロにお願いしました。家蚕の感覚ではこの手紡ぎは無理のようです。
 倉谷さんや私がウールの感覚で紡げば、モータ式のフライヤーで簡単に紡げてしまいます。いま新潟のプロにお願いしています。むつかしい との返事が来ています。近く紡いでおられる現場に行って、紡いでいる方と直接交流を持つつもりです。


9、中国の天蚕糸

 天蚕は学術的には、日本原産の虫です。したがって国内だけの競合だと、ほとんどの人が考えておられ、中国産の事は全く無視されています 。しかし、糸を扱います我々の現場では、そうではありません。