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糸選びのポイント

着 尺(きじゃく)
着物は、巾 約1尺(鯨)・長さ巾 3丈3尺(約12.2m)です。重さ約700g以内という制約の中で一枚の布を着物に仕立てます。長さと重さが制限されていれば、当然使用出来る糸の太さ(デニール)も決まります。経糸ですと150D~250D位の糸、これは1尺巾の経糸本数が1600本~1000本という事と同じです。使用する経糸の太さが決まる事により、必然的に筬の羽数も決まります。300Dを超える経糸は、着尺としては太過ぎ重くなります。また、緯糸は200D~300D、400Dを超えると重くなりすぎます。その範囲の中で糸の種類(生糸・玉糸・真綿紬糸 等)と太さを決め、さらに風合いや表現したい紋様などで経・緯のバランスを決め、予算を考慮し糸のグレードを選択し、精錬・染織・製織して一枚の着尺が出来上がります。羽織地用の羽尺は、基本的には着尺と同じで、尺や長さが羽織丈という事になります。


着尺の様な糸の太さの制約は基本的には有りません。織られる方の感じ方や風合いを重視し、糸の太さ・種類・組み合わせを選択し、織り巾8寸・9寸、長さ約1丈3尺の織り方であれば帯になります。薄くて帯として張りが無く結ぶことが出来ない織布であっても、帯芯を入れて仕立てる事が出来ます。つまり、帯として通用する織布であれば、好みやイメージに合った織物設計をすれば良いのですが、一般的には経糸には糸に張りが有り、しっかりとした双糸が向いており、緯糸は出来るだけ素材感のある太目の真綿紬糸、節糸が適します。染織された織の残り糸や古い布を細く裂いて糸に使用する事も出来、着物の世界という制限が有りますが、比較的自由な発想で作れるのが帯という事になります。

マフラー・ショール
帯よりもより自由な発想で用途を考慮して、ふんわり、柔らかく、糸あたりが気持ちよく感じられる布で、経糸・緯糸の密度は密より荒く有る事が望まれます。一般的に、布の素材感が良くなるように経糸より緯糸が太い糸使いをしますと、緯糸の張りが出てしまいがちで、少し帯的な感じになり首や肩に馴染み難い事になり、緯糸より経糸を太い糸を使用する方が馴染みやすくなります。また、緯糸に真綿紬糸などで少し細めの糸を使用すると、ふっくらとし、少し羽毛の風合いがでる事で、ずり落ちる事も無く肌当りも良くなります。経糸は、1000中程度で柔らかい練の糸で、緯糸は経糸よりも細めが良いと思いますが、基本的には自由な発想で良いと思います。マフラー・ショールの長さが2M程度の場合には、絹糸では2綛(経糸・緯糸)です。もじり織や細い糸を使用ればオールシーズン使用できます。絹糸の場合には入門編として最適なテーマです。