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絹糸の特徴

絹糸の質は、繭の「質と良否」を問題にしなければなりません。然し、日本の養蚕は、糸質にこだわるのでは無くて強健な繭で、多収化と安定性を大前提に進めきました。 殆どの生糸が自動繰糸機によって均一な糸が生産され、蚕種名は異なっても糸の特徴がなくなり、個性のない糸になりました。手織りをされる方にとっては、魅力の無い繭糸と言えます。 そこで、注視したいのは「糸の作り方(製糸方法)」です。僅かに残る座繰り機での製糸や玉糸・節糸・手紡ぎの真綿紬糸そして海外で作られた昔ながらの素朴な絹糸 等を使用する事で、 魅力ある作品を生み出す事が出来ます。

撚糸(ねん糸)



木綿やウールは紡績工場で必ず撚りをかけ糸にします。その時点で、撚糸は特殊な場合を除いて、ほぼ規格の撚り方と撚り回数に仕上がります。しかし、絹糸の撚糸行程は、 「撚糸業」という小さな工場で、時によってはオーダーの撚糸をする場合が有ります。これは、絹が着物や帯といった少量多品種で価格帯の高い商品に使用されているからだと言えます。 しかし、昨今この様なオーダーで個性を出す事の出来る「撚糸業」という職種は少なくなりました。

撚糸には、「湿式」と「乾式」が有ります。湿式は、生糸(セリシンが付いた生の糸)を柔らかくして撚糸する方法ですが、水しぶきが飛び作業が大変となります。乾式は、柔軟油剤を使用します。 撚糸機には、昔ながらの八丁式・湿式乾式どちらにも可能なリング式・乾式のイタリー式とそれぞれの特徴が有ります。下村撚糸では、リング式の湿式で座繰り糸や玉糸の撚糸を行っています。

注:
繭から繰糸した糸は、極めて細く、そのままでは糸としては使用する事は有りません。この細い糸を、何本かを束ねて撚糸を掛けます。ばらばらになって扱いにくい生糸の束に軽く撚りをかけると、 丈夫な一本の糸として使えるようになります。撚糸は、このような簡単な目的の為に行われました。撚りをかける回数(撚糸の単位は、1メートルあたり糸が何回転したかで表します。)を変えたり、太さの 異なる2本の糸を撚り合わせたり、一度撚りをかけた糸を、何本かそろえて逆方向に回転させて一本の糸にしたり、いろいろな工夫をして、その糸で作られる生地の風あいや肌ざわり、丈夫さなどが全く 異なるという効果が出ます。