戻る 次へ

生糸の売買では、21デニールの糸は21中と呼ばれ、デニールの代わりに「中」を太さの単位に使って取引します。
 公式にはあくまで糸の長さと重さでデニールを算出しますが、ここで1つ注意しなければならないことがあります。一般的に使用するのは撚糸され、精練処理 された絹糸です。繰糸された生糸原糸21デニール糸の太さ表示は撚りの入っていない、セリシンの付いた未精練の平糸です。生糸の太さは、原糸の平糸の状態を1つの太さの基準として使っていますので、同じ条件で 実務的な太さ計算をしておかないと、染織の実際には役に立たないことになってしまいます。私は規格生糸の原糸の太さに対して、撚糸した未精練の生糸の場合は、撚り縮み率を約3パーセントと計算して、9000の 係数を修正して「8700×g÷m=D(デニール)」で計算しています。また、精練してセリシンを落とした生糸の撚り糸の場合はセリシン率を約23パーセントと計算し「11300×g÷m=D(デニール)」で 計算して使用された原糸の元の太さを推定し、実際の織糸を使用するときに役立てています。綛糸の長さは「綛糸の枠周×巻取り回数」で計算するので、この表示か長さの表示がされている糸でないとデニールが計算で きず、織物設計する時に大変困ります。糸は作り方、撚り方、撚り回数などで、風合いや嵩高さなどが著しく違ってきますので、せめて数字で太さを知っておくことは大切な事になります。


7 日本の蚕糸の現状と未来

 「日本の絹」と「日本の絹 純国産」という2種類の絹マークがあります。今、日本で使用されている絹糸の99%強は中国産とブラジル産で、この輸入された糸や繭から製糸 された糸で製織された織物には前者の「日本の絹」マーク、1%弱の国内産の繭から製糸された糸での織物には後者の「日本の絹 純国産」マークが付きます。2021年現在、養蚕 農家の生繭1kgの保証価格が約2500円、市町村によっては3000円以上もあるようですが、その内、製糸や生糸の受け手である者が支払う金額は今、約1250円。残りは補助金という事で、日本の繭・生糸 はギリギリ成立しています。生繭1kgの約18%が生糸量ですので、生繭1kg価格×6倍で、ほぼ糸原糸料1㎏価格です。プラス製糸代金で生糸の価格は決まります。中国生糸、ブラジル生糸の国際相場は10000円 弱です。補助金額が約1250円(原糸料価格では約7500円)以上補助されているため、国際相場と何とか競争できています。しかし、手作業の諏訪式や上州式での座繰り生糸や玉糸は、製糸代金をプラスすると2 ~3倍の価格になります。