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4 撚 糸

 木綿やウールは短繊維であるため、糸作りの紡績工程では必ず撚りをかけて糸にいたします。一方、長繊維である絹は撚りをかけなくても糸として使用できますが、一般的には製糸された原糸を目的の織物に合わせて 合糸し、撚糸して糸の取り扱いを容易にし、織物の風合いや地風を作っています。
 撚糸機には昔からの八丁式・イタリー式・リング式といった洋式のものなどがあります。撚糸の工程は原糸の糸繰り→合糸→撚糸→綛揚げ(かせあげ)という手順で行われます。 撚りの方向には右撚り(S撚り)と左撚り(Z撚り)があります。目的本数に合糸した糸を1方向だけに撚ったいとを片撚りの糸、または単糸と言い、その単糸を2本で逆方向に撚りを解くと諸糸(もろいと)、すなわち 双糸ができます。単糸が3本の場合は三子糸(みこいと)といい、撚り目の細かい腰のある撚り糸ができます。また双糸や三子糸の撚り回数を2倍ぐらい入れた撚糸を、駒撚り(本来の駒による駒撚りとは異なります)の 双糸、駒撚りの3子糸と言い、サラサラ感で夏物の織物に使います。
 糸の撚り回数は1メートル間の回数で表示します。一応の目安として、甘撚り(約300回/メートル以下)、普通撚り(約300回/メートル~約1000回/メートル以下)、強撚(約1000回/メートル以上) と分けています。撚り方向、撚り方、撚り回数の組み合わせで撚られた絹糸の表情は違いますし、用途も変わってきます。同じ生糸原糸を使っても、全く撚りのない糸で織られたものは羽二重、強撚糸で織り上げれば縮緬 という、全く地風の違った織物になります。輸入絹糸が99%以上の状況の中、規格撚糸(主に機械製織用)も中国での撚糸が主流になりつつあり、国内での撚糸は後継者も含めて激減、近い将来、国内撚糸も繭生産の養 蚕農家と同じ道を辿っていると思います。

5 精 練

 繊維には本来もっている油分や色素、不純物などが含まれており、製糸や製織時に付く汚れもあります。それらを取り除くことを精練といいますが、絹における精練には他の繊維と異なり、特別な意味があります。不純物 や汚れと共にセリシンを取り去り、フィブロインだけの光沢のある絹繊維にすることが、絹の場合の精練の主な目的です。セリシンの割合は糸の目方の約25パーセント。つまり25パーセント目方が減るということです。 アルカリ溶液で煮ることによって洗い流します。精練剤には昔は稲藁や木を燃やした灰からとった灰汁を使いましたが、現在では石鹸やソーダなどのアルカリ剤、蛋白質を分解する酵素などが使われています。
 精練は、繭の状態でする繭精練、糸の状態で行う糸精練、織物の状態でする生地精練があります。