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6) 生皮苧糸 製糸の際、繭の1本の緒(いとくち)を見つけるために、繭の上皮をずるずる引き出します。そのずるずると巻き取ったものが生皮苧で、それを綛糸(かせいと)にしたものを生皮苧糸または緒糸(ちょし)といい、精練すると艶がありふ っくらした風合いの良い絹糸になります。普通は裁断され、絹紡糸の原料にされています。しかし、カセ糸にした糸も僅かですが生産されています。 3 絹糸の品質 絹糸の品質は、まず繭の良否を識別することから始まります。日本の養蚕は糸量と強健な繭、多収化と安定化を前提に繭の改良を重ねた結果、蚕種名は違っていても、蚕種の特長の違いのない平準化した繭になっています。糸長が長く大き な繭を作る蚕種は繭糸も太くて強く効率的なものが製糸では良い繭といわれています。その繭から取れる、限りなく繊度ムラ・糸ムラ・糸節などのない均1な糸が、品位検査である生糸の格付けでは、上位から順に6A・5A・4A・3A・ 2A・Aとランク付けされます。規格性や均1性が良質の第1条件とされる業界では、この「生糸の格付け」結果は重要なのですが、最近の絹需要の減少、最終消費者のニーズの個性化・多様化は、従来の考え方を少しずつ変化させています。 とくに手織り、草木染めをされている人たちからは、規格のある均一な糸よりも、個性のある繭の糸の方が評価されますし、布帛を織る人、そしてその布帛を使う人の立場からの糸のニーズが、ようやく養蚕・絹業界に取り入れられ、今に繋 がります。「新小石丸」「ぐんま黄金」「ぐんま200」などの繭のブランド化はその表れの1つといえます。 絹糸の品質にはもう1つの大切な要素があります。それが糸の作り方、製糸方法です。製糸メーカーの糸の作り方や姿勢によって糸の品質は大きく左右されます。以前の製糸では繭の産地・蚕期・蚕種の異なる繭のブレンドは当たり前のこ と、時には外国産の繭もブレンドして平均化した生糸を作るのが製糸の技術でした。国産の繭が1%にも満たない現状では、規格生糸の格付け検査の評価では表れてこない糸の艶や染色性、風合いも大切な糸の個性です。また効率を追求する あまり、繭本来の良さを無視したスピードになりやすい製糸の現状は、絹糸の本質にかかわっています。蚕糸法等の法律がなくなり、自由度が増した絹の世界ですが、現状では選択の余地はあまりありません。蚕種・繭、可能ならば繭の生産 者、製糸メーカー等を選択し、撚糸(撚り方)も含めて、自分の織物に適合した絹糸を選択してください。製糸の方法にも自動繰糸機をはじめ、昔からの方法である座繰り機や多条式があり、それぞれ出来上がる糸の個性や価格が異なります。 |