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2) 玉糸
 玉繭は同巧繭(どうこうけん)ともいい、2頭以上の蚕が伴った1粒の繭のことで、その玉繭を入れて製糸した糸が玉糸です。110中を標準に、60中・225中と目的の繊度で製糸されています。玉繭は正繭のように1本で糸が引け ることはなく、時にはもつれ合って糸が出てくるため、繰糸された糸は玉節のある独特の風合いのある糸になります。繭の性質上、繰糸の自動化も難しく、昔ながらの座繰り機や少し自動化の多条機で製糸されています。以前は生糸の代用 品として安価な絹糸でしたが、現在では玉繭。及び玉糸製糸が少なくなった希少性に加えて、手織りをする方たちにとって糸作りや風合いの良さなどが見直され、生糸より高価な糸となりました。昔の養蚕では玉繭は多く出来ましたが、現 在の養蚕では殆ど生産出来ず、集繭も困難で、貴重な糸になりました。

3) 真綿紬糸
 本来は、生糸に繰糸できない不良繭や玉繭を原料にして真綿作りをしましたが、今の日本では正繭を使用し、福島県の保原町が唯1の生産地です。繭をアルカリ液で精練し、セリシンを洗い落として綿状にしたものが真綿で、昔は衣料品の 中綿や布団の木綿ワタを包む綿としてよく使われていました。この真綿を手紬ぎして作る糸が真綿紬糸です。その代表的な織物が「結城紬」で、真綿は繊維が長いままなので、撚りをかけずに真綿を引き伸ばすだけで糸になり、織られていま すが、それ以外の紬織物の真綿紬糸は、ほぼ100%中国でフライヤー式の電動手紡ぎ機を使い、撚りをかけて真綿紬糸はつくられています。紬織物は、基本的にはこの真綿紬糸を使った絹織物のことなのですが、今では大島紬のように真綿紬 糸を全く使用せず、生糸の本糸のみを使っているものもあり、時代の変遷を感じます。

4) 絹紡糸
 副蚕糸を原料として作る絹糸です。副蚕糸を短い繊維に裁断し、カーディングして綿状にしたものをペニーと呼びます。このペニーを紡績したものが紡績絹糸(絹紡糸)です。絹紡糸は木綿糸や毛糸を作る工程とほぼ同じなので、短繊維の 太さの単位である番手を使用しています。綿番手か毛番手のいずれかで表示され、フィラメント糸に使用するデニールは絹糸であっても使用することはありません。また、真綿を原料に紡績した機械真綿糸もグレードの高い絹紡糸としてあり ます。

5) 絹紡紬糸
 絹紡糸の1種で、絹 紡糸よりさらに品質の落ちる短い屑繊維(ブーレット)を原料に紡績した絹糸の事です。品質が落ちる分、節ができやすく紬に似ている事から紬糸(ちゅうし)と呼ばれ取り引きされています。絹100%ですので、健康 指向の5本指靴下等に使用されています。真綿紬糸(つむぎいと)と同じ字ですが、読み方が違うことと、(ちゅうし)は切られた短い繊維での紡績糸、(つむぎいと)は真綿から長繊維のまま引き伸ばした糸です。その違いを理解して安価 な絹糸として利用できます。