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絹の糸作り入門 ―- 生糸・玉糸・紬糸 |
その手法と現状 下 |
撚 糸 木綿や毛糸は短繊維にのため、撚りをかけて糸になります。しかし絹は長繊維ですので、撚りのかからない絹糸の生糸原糸で製織し、布の状態で精錬したものが羽二重、糸精錬し、染織した後に製織する先染め織物の場合は撚糸が必要です。撚糸には、湿式と乾式、方法では糸引き出し式と糸引き込み式があり、前者には八丁式・イタリー式、後者にはリング式とフライヤー式があり、張り撚りの一種である昔ながらの駒による駒撚りも和楽器の弦の世界では残っています。撚糸業は、糸商(糸屋)や織物業の下請け的な存在で、一番早く衰退し、廃業が進んだ業界で、これからは規格の撚糸は海外で撚糸し、生糸原糸でなく生糸撚糸で輸入される時代になるのではと思います。撚りの加減で織物の味、風合いは変わります。規格糸では表現できない個性的な織物に撚糸の撚り加減の技術は必要で、その技術が途切れないように頑張りたいと思います。 精 錬 絹精錬は、内側のフィブロインとそれを囲む外側のセリシンの2種類のたんぱく質から成り立っています。セリシンが付いた状態の絹糸が生糸です。セリシンは、熱水やアルカリに溶ける性質を持っています。精錬は、繊維に付着した汚れや油分などを取り除く事ですが、絹の場合、合わせてセリシンを取り除き、絹特有の光沢と触感を与えます。精錬の作業を、繭ですれば真綿に、糸ですれば先染めの織物用の絹糸に、生地ですれば友禅染など後染め用の白生地になります。 糸の太さ(繊度)と長さ・重さ 絹糸やナイロン製のフィラメント糸は、長さを基準とした恒長式のデニール(D)で太さを表示します。90000mの長さの糸が1gのものを1D、21gある時は21Dとなります。現在の家蚕の繭糸繊度は約3D、野蚕の天蚕糸や柞蚕糸の場合は約6Dです。 |