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2 生糸の種類

@ 生糸(キイト)

繭には、一頭の蚕が作った「正繭(セイマユ)」と二頭の蚕が作った「玉繭(タママユ)」が有ります。生糸は、この「正繭」で製糸した糸です。(本糸とも言います。)養蚕農家で生産された生繭(ナママユ)は、製糸工場に持ち込まれます。そして、殺蛹と長期保存を可能にする為、蛾が羽化する前に熱風で処理を施し、乾繭(カンケン)として保存します。
乾繭を煮繭し、製糸機で繰糸された糸を生糸原糸といいます。生糸は、繭糸のセリシンが持っている水溶性膠質の特性を利用して繰糸されます。現在、家蚕の繭は一粒約3ディール(7粒 21ディール)となります。また、「生糸」という呼び方は、セリシンが付いた状態の「生の糸」という意味で、精錬された糸は「練り糸」と呼びます。
蚕が、繭糸を吐き始める初期・中期・最後とその期間によって、太さや断面の三角形が異なる為、機械的に繰糸された合繊繊維と異なり太さが一定では有りません。つまり、21デニールの生糸は、21デニールを中心に作った糸という事から21中と取引時には呼ばれます。以前は、21中が生糸の標準規格でしたが、現在では27中となっています。よって、規格生糸としては、21中・27中・31中・42中という事になります。それ以上の太さ60中・100中の糸は、繭の条件が悪い為に太くしか製糸出来ません。これらは、均一性や規格性には問題が有りますが、用途によって昔ながらの味や素朴性を持った座繰り糸として手織りの世界では重宝されています。


A 玉糸(タマイト)

玉繭は、同功繭(ドウコウケン)とも呼び、この繭で製糸した糸が玉糸になります。110中を標準に、60中・225中 等の様に、目的に合わせて製糸されます。糸は、もつれ合って出て来る為、正繭の様に1本で糸が引けません。繰糸された糸は、節の有る独特の風合いになります。この性質上、繰糸の自動化は難しく、現在でも昔ながらの座繰り機や半自動化された多条機で製糸されています。昔は、生糸の代用品として安価糸でしたが、現在では、「製糸の希少性・糸作りの面白さ・風合いの良さ」で高価となってきています。