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5 精練(セイレン) 繊維は、本来持っている「油分・色素・不純物 等」が含まれ、製糸や撚糸時に付く汚れが付着しています。それらの汚れを除去する事を「精錬」と言います。絹の精錬は、他の繊維とは異なります。絹における精練の大きな目的は、不純物と共にセリシンを取り除きフェブロインのみの光沢を出す事です。 *注:フィブロイン 絹の主成分である繊維状タンパク質です。繭糸中では、セリシン(タンパク質)に包まれて存在します。 セリシンの割合は、糸の重さの25%です。精練方法としては、アルカリ溶液で煮沸する事によって取り除かれます。昔は、稲藁や木を燃やした灰から取り出した灰汁を使用しましたが、現在では石鹸やソーダなどのアルカリ剤、タンパク質を分解する酵素等が使用されています。精練を行う状態は以下の3パターンが有ります。 1)繭精練 繭精練を行う事で、セリシンは殆ど洗い流され、繭は真綿の状態になります。 ハンカチ状に伸ばした「角真綿」 袋状に伸ばした「袋真綿」 帽子状に伸ばした「帽子真綿」 等 真綿紬の原料としてそれぞれの形状で取引されています。 2)糸精練 「練り」というのは「精練」のことです。生糸(繭から繰り出したそのままの糸)の状態では、フィブロインという繊維質のまわりにセリシンという「にかわ質」の接着剤のようなものが付着しています。そのままでは、ごわごわしていて硬い感じがしますので取り除きます。この工程が絹の精練で「練り」と呼ばれています。この練りを、糸の状態で行ってから織物にするか、織物にしてから行うかで、「先練り」(先練り織物・先染め織物)と「後練り」(後練り織物・後染め織物)に分類します。 糸精練の場合、製糸されたままの糸「生糸原糸」を、撚りをかけずに精練する事は、余程太い糸で無ければ避けた方が良いでしょう。撚りの無い糸の精練は、セリシンで1本の糸に収束されている糸がバラバラになってしまい、一本の糸として手巻き取る事が困難で、糸も毛羽立ち、美しく仕上げる事が難しくなります。糸精練は、撚りをかけた糸である事が原則です。そしてその精練糸を染色し、縞・絣・紬 等の先染め織物が織られます。精練方法には、昔ながらの「袋練り」「竿練り」や、自動化された噴射式染色機による「噴射式精練方法」が有ります。 |