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し行


*紫鉱(紫香 しこう)
香料名を「花没薬」と呼び、奈良時代に薬や草木染めの染料として伝来し、法隆寺や正倉院等の織物の染織に「紫鉱染め」の呼称が残っています。ビルマネム・ハナモツヤクノキ・イヌナツメに寄生する介殻虫(ラック虫)の雄の樹液を吸い分泌された紫色の膠質のスティック状の物質から色素を取り出します。臙脂色・赤紫色・紫黒色に染色可能で植物繊維を染める際は、豆汁などで下染めをし、先媒染法によるアルミ媒染の後に染色を何度も繰り返し染め上げていきます。

*紫 檀
インド南部が原産でマメ科の常緑喬木、葉は羽状複葉で黄色の蝶形の花を咲かせます。材は暗紫紅色で硬く、木目が美しく床柱や家具 等に利用する以外に赤鳶色(鳶の羽のような色で赤味の茶色)を染める染料として使用されます。 *車輪梅 バラ科の常緑低木で、沖縄や奄美大島(沖縄の方言ではテカチ、奄美大島ではテーチ木と呼ぶ。)・九州の海辺・本州や四国の太平洋岸に自生しています。4月から5月ごろにウメに似た白色の花が円すい状に集まって開花し、枝と葉っぱが車輪状に付くことから命名され、黒紫色で球形の小果をつけます。そして、樹皮や材にタンニン4~5%を含み奄美大島の大島紬の褐色染色に使用します。
その染法は、次のようになります。
・テーチ木(車輪梅)の幹や根を細かく砕き、その小片を釜に入れ、重曹を添加して半日ほどかけて煮出します。この重曹の添加は、堅牢度を強める働きをもつタンニンを抽出するために行います。
・濃茶褐色の染液に、糸や布を漬け込んで染色します。
・漬け込んでは絞るという作業を、必要回数行います。 ・必要に応じて、泥染めを3~4回行います。 また、大島紬の特徴的な色「烏の濡羽色」といわれる艶のある黒色を染めるためには、染め回数を60回以上は繰り返し行います。