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*梔子(くちなし) クチナシの色素成分が、奈良県の下池山古墳から出土した繊維片から検出され、日本における染色用色素利用は、古墳時代に遡ります。そして乾燥果実の粉末は、奈良時代の皇族が身に着ける袍に用いられる「黄丹(おう に)」の下染めに使われ、平安時代には「黄支子(きくちなし」」と呼び、延喜式や古今和歌集などにも記述があります。梔子で染めた黄色に、紅花の赤をわずかに重ね染めした色を「支子色」・梔子のみで染めた色を「 黄支子」と区別され、江戸時代には「口無し」から不言色と呼ばれていました。染料には果実を使用し、発酵処理をすることで青く変化します。先媒染法を用い染色しますが、植物繊維を染める際は豆汁などで下染めを します。アルミ媒染の後に、染色を何度も繰り返し濃色に染め上げます。また、抽出回数によって色の発色も異なり、回数を重ねるにつれ黄みが増してきます。 梔子色 アルミ媒染 山吹色 アルミ媒染 青みを含んだ色 銅媒染 *櫟(くぬぎ) ブナ科に属し、古くから使用されてきた染料の一つです。樹皮やドングリの殻は橡染め(つるばみそめ) の染料となります。灰汁 (あく) 媒染して薄茶色、鉄媒染して焦げ茶色や黒色に染まります。ドングリの殻を煎じ鉄 媒染で染色すると黒橡という色になります。一般に橡とはこの色のことで「墨染め」とも呼ばれていました。古くから黒と言えばこの黒橡で、「冠位十二階の制度・養老の衣服令」では最下位の色で、家人奴婢が着る 色と されていました。 染色方法により、次のような3種類に分けられていました。 ・茜を加えて染色 高貴な人用の袍(ほう)や直衣。 ・濃い黒に染色 家人(けにん)用。 ・浅い黒に染色 凶服用(喪服用)。 *注 持統七年(693年)正月の詔では 「天下あめしたの百姓おほみたからをして黄染めの衣きぬを服しむ。奴やっこはくろ衣をきしむ」と記述が有ります。11世紀になると一転し 四位以上の高官が召される朝服の袍の色となり、「橡の袍」と呼ばれるよう |