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*刈安
日本の近畿・中部地方に自生するススキに似た草で、葉を細かく切り煎じた汁を染色に使用します。刈安という名は「刈り易い」事から名付けられました。刈安の種類は、近江国(滋賀県) 伊吹山に多く産する「近江刈安」があり、 延喜式に掲載されている古典的な黄色の染料で、伊吹山でとれるものが最良とされていました。また、山地に多い所からヤマカリヤス(山刈安) ・白川地方ではコガヤと呼ばれています。刈安色は、黄色系の色名の中では最も古く、 奈良時代「正倉院文書」にも登場し、「延喜式」に刈安の染め方が記されています。この黄色の色素は、 紫外線から細胞を守る目的で植物が生成するフラボンと言う色素です。そして、キハダ(黄柏)・クチナシ(山梔子)・オウレン (黄連)等が黄色染めに用いられていました。また、江戸 時代には各地で栽培もされた記録があります。染色方法は、穂の出る前に刈り取り、乾燥し、熱湯で煮出したものを染液とします。カリヤスの黄色色素はフラボンといいます。 また、藍と の交染で緑色に染色出来ます。この染色は、カリヤスのアルミ媒染で黄色に染色し藍を交染して緑色を出します。染法は、乾燥した葉茎を煮出し煎汁をとり、これに糸または布帛(ふはく) を浸け、染液を浸透させ、アルミナ 媒染を行います。(媒染剤は、ツバキ科の椿・榊・ヒサカキ 等の灰汁が用いられます。)

注:八丈刈安
八丈刈安は、伊豆諸島の八丈島に産する刈安のことで「小鮒草(こぶなぐさ)」とも呼び、イネ科の一年生草で、葉は卵状の楕円形で先が尖り、基部に茎を抱いています。その形が小鮒に似 ていることから「小鮒草」の名が つけられました。秋に刈り取り、翌年に染液を作り黄色を染め出します。若いうちに刈り取ったものは青味がかった黄色になり、老熟したものは赤味がかっ た黄色になります。また。刈安は本来「多年草」ですが、八丈島では「小鮒草」 のことを「苅安」と呼び、染液のことを煎汁(ふし)と呼びます。黄八丈に使われる黄色も刈安ですが、小鮒 草は、北海道から沖縄にかけて分布します。また、朝鮮半島・中国 等にも分布し、草丈は20センチから50センチ程です。 また、小鮒草を刈安と呼ぶのは八丈島だけです。


*柏
ブナ科に属する落葉高木で、山地に自生し、葉が大きく、4~5月頃に黄褐色の花を咲かせます。樹皮は染材に使用し、染色では媒染剤によって色が異なります。(灰汁で黄茶色・硫酸銅で 茶色になります。)