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「錦・綾」は、上代染織品(8世紀時代の染織品)の場合、 ・錦とは、先染めした多色の色糸を用いて文様を表した絹織物 ・綾とは単色、後染めで、地組織の違いによって文様を織り出した絹織物 です。 経錦(多色の経糸と単色の緯糸を用いた錦) 複数色(3色程度)の経糸を一組とし、いずれかの色糸を浮かせ、他の色糸を沈める事で地と文様を表現します。緯糸には、母緯(おもぬき)と陰緯(かげぬき)の2種類がある複様組織です。 (母緯とは、経糸とともに地を構成するための糸・陰緯とは、たとえば3色の経糸を用いた経錦の場合は、3色のうちの1色のみを表面に出し、他の2本の経糸を沈める役割をする糸)日本では、 正倉院より一時代古い法隆寺裂「蜀江錦」と呼ばれる裂です。 緯錦(多色の緯糸と単色の経糸を用いた錦) 多色の緯糸を一組とし、このうちいずれかの糸を浮かせ、他を沈める事で「地」と「文様」とを表現します。緯錦では、経糸に母経(おもだて)と陰経(かげだて)の2種類が用いられます。 (母経は緯糸とともに地を構成するための糸・陰経は、緯糸のうちの1色のみを表面に出し、他の糸を沈める役割をする糸)経錦が、整経の段階で色数が決まってしまうのに対し、緯錦では、 製織の過程で多彩な色糸を用いる事が可能です。よって、大型の文様も織る事が可能です。「縹地大唐花文錦」(はなだじだいからはなもんのにしき、正倉院宝物)、錦張りの肘掛である 「紫地鳳形錦御軾」(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく、正倉院宝物)などが代表作です。 浮文錦 緯糸で文様を表現し、「地」を経糸で表現します。そして、複数の色糸からなる緯糸を任意に浮かす事で文様を表現します。また、「地」が平地のものと綾地のものがあります。 綾 織物の三原組織(さんげんそしき)の一つとしての「綾織」は、「斜文織」と同じです。平織のように経糸と緯糸が、1本ずつ浮き沈みを繰り返すのではなく、2越し浮いては1越し 沈むという形を繰り返す織物です。この繰り返しで、経糸または緯糸の「浮き」が帛面に斜めに連続して織り上がります。しかし、上代裂の名称の「綾」はこれとは若干意 味合いが異なり、後染め、単色の紋織物であって、「地」と「文」とを異なる組織で表したものを総称して「綾」と呼んでいます。 |