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先染めは糸の段階で染め、その染めた糸を使用して織り上げます。無地の織物もありますが、 色糸の配置を計算し織り上げ、様々な模様を織り出す事が可能です。(錦・絣・西陣織・博多織 等)縞や格子模様は、先染めによって織り上げます。しかし、 糸の配置を精密に計算し、設計を行う必要がある事から難しく、ジャカード織機が登場するまでは職人の高い技術と手法が必要でした。よって、江戸時代の日 本では、縞帳という見本帳が作られ、各家庭や問屋で継承されていました。 後染めは、染めていない糸で織り上げた織物(白生地)を、「染料に浸ける」「型紙や筆などを用いて捺染する(更紗、友禅染 等)」事です。「染め物」は、 後染めを意味する場合が多く、模様のない「染め」のみの織物は色無地と呼んでいます。例えば、京都の丹後産の繻子織は後染め・京都市の西陣産の繻子織は、 先染めと同じ織り方でも産地によって染めの手順は異なる場合もあります。 また、日本各地で様々な染織が受け継がれ、それぞれの地方で独自の染織文化を受け継いできました。北海道の優佳良織・アツシ織 、東北の紅花染め、関東の 江戸小紋・黄八丈、北陸・部の小千谷縮・越後上布・塩沢・加賀友禅・信州紬、近畿の丹後縮緬・西陣織 ・京友禅・伊勢型紙、中国・四国の伊予耕・阿波藍、 九州の博多織・佐賀錦・薩摩緋・大島紬・沖縄の紅型・芭蕉布・八重山上布 等です。

ー 更 紗 −
日本で「更紗」の名で呼ぶ染織工芸品は、インド更紗や前述のジャワ更紗・ペルシャ更紗・シャム更紗 等の種類があります。日本製の更紗は、木綿でなく絹地に染めた友禅染に近い文様様式があります。正倉院宝物の染織品には、絞り染め・板締め染め・蝋防染・木版 等を使用した染め文様が多く存在し、平安時代から中世末までは「織り」による文様が主流となっています。特色は、その鮮烈な色彩や異国風の文様・木綿という素材を用いる・「織り」ではなく「染め」で文様を表している事にあります。そして、更紗の渡来によって「染め」の文様表現が再び盛んになり、後の友禅染などに影響を与えました。
1)日本における更紗
室町時代以降の中国(明)との勘合貿易で、金襴・緞子 等の高級染織品が輸入されました。インド産の更紗裂は、名物裂と同様に茶人らによって珍重され、茶道具の仕覆・茶杓の袋・懐中煙草入れ 等に利用されました。また、室町時代から近世初期にかけ日本に渡来した更紗裂は、「古渡り更紗」として珍重されています。