戻る 次へ



羽越しな布(うえつしなふ)
「しな織り」は山野にする草木の繊維を使った織物で、起源は縄文や弥生時代とも言われています。関川における「しな織り」の発祥は明確ではありません。しかし、沖縄の芭蕉布・静岡の葛布と「三大古代織」である事・関川村の家々に残された織機が中国から伝来した機織り機と酷似している事によって、古い起源だと考えられています。
羽越しな布は、シナノキ・オオバボダイジュ・ノジリボダイジュ(シナノキ科シナノキ属の落葉樹)の樹皮を使います。日本海側や東北地方の山野に多く自生し、地方によりマダ、マンダ、モウダ、モアダなどと呼ばれています。これら樹木の樹皮から取り出した繊維を績(う)み、撚(よ)りをかけ糸を作り、地機や高機により織り上げます。樹皮の繊維なので機械化が不可能で手作業のみです。日本では、縄文や弥生時代から衣装や装飾品などに利用され、現在では山形県鶴岡市関川地区や新潟県岩船郡山北町で受け継がれています。樹皮の繊維を使用している事で、ざっくりとした手触りと落ち着きのある風合いに特徴があり、帯地・バッグ、帽子等多くの日用品にも加工されています。

注:「しな織り」
縄文や弥生時代から、山野に自生する科(しな)・楮(こうぞ)・楡(にれ)・藤(ふじ)・葛(くず)・苧麻(ちょま)などの草木から取り出した繊維で糸を作り、布に織り上げ衣装や装飾品などに利用してきました。明治時代以降は、紡績技術の発展で綿製品が普及してから多くの地域で生産されなくなりましたが、着流しや農作業等の仕事着として利用する地域も有りました。(漁網、漉し布、敷布や収納袋としても流通)

@ナノキの皮が剥がれる6月中旬から7月上旬の梅雨時期に伐採し、皮を剥ぎ、内側の皮のみを取り出し、日光で乾燥させ、屋根裏部屋などに収納します。
A8〜9月に乾燥した「しな皮」を一昼夜池や川にしたし柔らかくします。釜を赤土で作ったかまどで釜に入るサイズに巻いた皮を入れ約10〜12時間煮ます。
B「しな」を水洗いし皮の層を一枚ずつはがしていきます(へぐれたて)。さらに糸となる繊維部分を取り出すため、川に浸けながら石や竹棒で「こいて」いきます。
C維状になった「しな」を大きな桶に入れ、こぬかと水で2昼夜浸け込んだ後、川できれいにこぬかをとり軒先などにつるして乾燥させておきます。
Dが降り始める12月頃に「しな」に湿り気をあたえながら、指先で細く裂き、糸の状態にします(しなさき)。
Eいた糸状の「しな」を織り糸にするために、太さを調整しながら長くつなぎ(しなうみ)、次の作業がしやすいように玉状にまとめます(へそかき)。
F「へそかき」をさらに状態のよい強い糸にするために糸車を使って撚りをかけます(しなより)。
F完成した糸を機にかける為に、「へば」という台を使って縦糸を準備し、「くだ」という道具で横糸を準備します。
G糸と横糸をセットし、昔からの「いざり機」や改良された「高はた」でしな布を織ります。