戻る 次へ



富  山


井波紬(いなみつむぎ)


富山県井波地方にて江戸時代中期から織られていた紬です。山漆の樹皮などの植物染料を使用し、茶褐色の色合いを持っています。しかし、太平洋戦争後に途絶えていきました。
井波地方では、1573年頃に居座機で生絹を織り、1818年頃から紬織が始まったといわれます。手紡ぎの太糸を用い、刈安など植物染料で主に茶褐色に染めて織り上げていました。その独特の風合いから、着尺や茶人のコートなどに用いられそうです。最盛期は大正年間で徐々に衰退し、昭和19年に消滅していきます。

福光麻布(ふくみつあさふ)


794年(延歴13年)に初めて麻布を織ったと伝えられています。1573(天正年間)〜1615年(慶長年間)に加賀藩が奨励したことから盛んに生産されていきます。
江戸時代には、地域によって名称が異なりました。小矢部市八講田地域では八講布、小矢部市五郎丸地域では呉郎丸、小矢部川の上流地帯(川上郷)では川上布(かわかみふ)と呼ばれ特産となっていました。そして、砺波地方に拡散していきます。江戸時代の麻布は、「経糸は、五箇山近在の地苧」・「緯糸は、最上産の青苧」を使用していました。現在では、群馬・栃木産の大麻に、苧麻を一部に使用しています。
苧績み(おうみ)はすべて手作業で行い、糸車で撚りをかけます。機は居坐機、高機を使い、織り上げたあとは灰汁水に漬けて晒し、木槌で打ち、さらに水洗いして天日に晒す、という作業を20日から30日ほど繰り返します。衣料のほか幕、茶巾、蚊帳、畳縁用にされ、昭和40年代までは盛んでしたが、現在は「からむし栽培」を初めとして非常に少なくなっています。

*注 「苧引き後の繊維」
成長したからむしは7〜8月に刈り取り、浸水―>皮はぎを行い上質な繊維を取り出ための熟練作業「苧引き」を行います。苧引き盤・苧引き板・苧引き具を使用して一枚ずつ表皮と繊維に引き分け、品質毎に区分けして小さく束ねて2〜3日陰干しをします。
*注 「苧績み(おうみ)」
良く乾燥させた「からむし(原麻)」を爪で細く裂き、裂いた原麻を太さが均一になるように組み合わせ先端をヒネリながら繋ぎます。繋いだ糸が絡まないように「おぼけ」と呼ばれるワッパ籠の中に丸く平にします。 「撚り掛け(よりかけ)」 「おぼけ」にたまった糸を静かに取り出して湿らせてながら専用の糸車で撚りをかけて四ッ枠(よつわく)に巻き取ります。撚りをかける事で強く丈夫な糸に仕上がります。 「染色」 からむしの染色には、植物の葉・茎・根(カラムシやネムノキ、ヨモギ、日本茜(にほんあかね)など、)を煮て染め上げます。