戻る | 次へ |
十日町明石ちぢみ(とうかまちあかしちぢみ) |
19世紀の終わり頃、京都の西陣の夏用の反物の見本を持ち帰り、もともとあった十日町透綾(とおかまちすきや)という織物の技術に応用し試作研究が行われました。 そして、緯糸の強撚(きょうねん)と整理法の技術研究が熱心に進められ、すでに十日町で織られていた撚透綾(よりすきや)を改良して、緯糸に強撚糸を使用した新地風(じふう)「透綾ちりめん」の試作に成功し、明治中頃から「明石ちぢみ」と名付けられ市場に送り出されました。戦前まで、独特な清涼感を持った夏の着物の代表となります。戦後、生産は次第に減少しますが、製造技術は十日町固有の伝統として受け継がれます。 模様の表現方法は十日町絣と同じですが、基本的な違いが撚糸(ねんし)の方法にあります。 明石ちぢみの緯糸は、まず下撚(したより)として1メートル間で300回くらい撚(よ)った右撚、左撚の片撚のカセに巻き整えます。そして生糸のまま、所定の色に柔軟染めをし、カセになった糸の目方の30〜40%の植物性の調合糊を手でたたきながら、ムラなく染み込ませます。さらにこれを八丁撚糸機(はっちょうねんしき)で、1メートルの間で3,000〜3,500回くらいの撚(よ)りをかけます。 「伝統工芸品としての特徴」 ・絣織にあっては、次の技術又は技法により製織された「しぼ出し織物」とする。 (1) 先染めの平織りとする。 (2) かすり糸は、たて糸及びよこ糸又はよこ糸に使用する。 (3) かすり糸の、かすりを手作業により柄合わせし、かすり模様を織り出す。 (4) かすり糸の染色法は、手作業による「くびり」又は「摺り込み」による。 ・ 縞織、格子織及び色無地にあっては、次の技術又は技法により製織されたしぼ出し織物とすること。先染めの平織、綾織、朱子織、又はこれらの変化織とする。 ・ しぼ出し織物に用いるよこ糸は、「明石緯」を使用すること。「明石緯」に使用する糸は、「八丁式撚糸機」で下撚りをした後、布のり、わらびのりその他の植物性糊料を手作業によりもみ込む。 ・ しぼ出しは、「湯もみ」による。 ・使用する糸は、生糸若しくは玉糸又はこれらと同等の材質を有する絹糸とする。 |
越後上布(えちごじょうふ) |
古くから「縮・上布」と呼ばれるこの麻織物は、越後魚沼地方の特産品です。この麻織物に縮を加えたものを小千谷縮といい、平織のものを越後上布といいます。 越後上布の原料である苧麻は、イラクサ科の多年草で全国いたるところに群生し、昔から衣料の原料として各地で使われてきました。平安時代の延喜式の記録によると、全国26ヶ国の主要生産品として麻布が記録され、その生産量も越後の数十倍を誇る国もありました。越後の風土と粘り強よさで越後上布として発展を遂げます。上杉家が越後を支配する頃、原料になる苧麻も大半が野生から畑に管理されるようになり、その苧麻の交易は上杉家の財源として大きな位置を占めます。 苧麻の繊維を紡(つむ)いで糸を作り、小千谷縮の特徴であるシボを出すために緯糸に強い撚(よ)りをかけます。絣模様は織る前の糸に絣付けという柄付けを行い、織りながら柄を合わせていきます。織り上がった布に仕上げの工程でシボを出します。 越後上布の雪晒しは非常に有名で、3月の快晴の日、雪の上に布が晒される光景は新潟の名物です。 越後上布は下記の特徴があります。 ・糸は手紡ぎの苧麻糸のみを使うこと ・絣の柄付けは手作業で糸を括ること ・地機(いざり機)で織ること ・湯もみ、足踏みをすること ・雪晒しで晒すこと |