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多摩結城(たまゆうき)
八王子の「紋お召し」で、女物着尺地を使用した「高いしぼ立ち」の高級絹織物です。
350年前の文献に、滝山紬・横山紬・紬島の名称が記載されています。そして、江戸時代後期には、関東屈指の織物産地として発展したとあります。古くは、八王子の織物は全て男物でしたが、大正時代に男の外出着として洋服が普及し和服の需要が減りました。それ以降女物着尺地が中心になり、昭和には全国で初めてジャガードの紋職機による絹セルお召しが作られたそうです。多摩結城は、昭和四年に完成し女物着尺地中心の織物産業地となりました。昭和30年頃、ウールと絹の交織ウールお召しがブームでしたが、最近では正絹お召しとしての多摩結城が見直されています。



黄 八 丈
八丈島に古くから伝わる絹織物で、島に自生する草木を染料とした草木染めで、絹糸を「黄」「樺」「黒」に染め上げ、すべて手織によって織り上げられています。起源は古く、時代的には明らかではありません。しかし、室町時代から貢絹の記録があり、江戸時代には将軍家の御用品としても献上されていたようです。
黄八丈は、「黄」を主色で、「樺(かば)」と「黒」の二色と無地の白を加え、柄は伝統的な格子縞で織り上げています。江戸時代から「平織」(ひらおり)と「綾織」(あやおり)という決まった織り方が受け継がれています。

・「黄」
イネ科の一年草のコブナクサArthraxon hispidus Makino (八丈島では、刈安 カリヤス)を乾燥して使用します。この草は、関東以南の原野に自生し、八丈島ではどこにも見られる野草です。秋口に、穂先が出る頃(一番よい色がでる)刈り取りし、乾燥して使用します。穂先の若い時には、青みがかった黄色になり、成長するにつれ赤みがかった黄色となります。現在では、野草としての群生が無くなった事から栽培して刈り取る時期を調整し混合して使用しています。
・「樺」
クスノキ科のタブノキ Machilus Thunbergii sieb.et Zucc.(八丈島ではマダミ)の生皮を剥いで染料にします。暖地の海岸近くに自生する常緑樹で、大きいものは高さ13m、幹の直径は1mにもなるそうです。海岸近くの日当たりの良い場所育った木で、生皮を剥いだ直後に取れる染料が最良で、日数の経過とともに鮮度が落ちると言われています。剥いだ樹皮の面が赤くなるものを「くろた」といい、赤くならないものを「しろた」と呼びます。樹齢30年以上の木からは「くろた」がとれ、染料として優れているそうです。しかし、最近では原木が少なくなり若いタブノキの樹皮も使用するそうです。
・「黒」
ブナ科のスダジイ (イタジイ)Shiia Sieboldii Makino(八丈島では椎 シイ)の樹皮をよく乾燥して使用します。全島に生育し、昔は薪や炭材として使用していましたが、炭を焼かなくなった事から豊富使用できます。生皮や若い木の皮ではネズミ色になる為、皮は樹齢30年以上の老木でポキリと折れるほどが良いと言われていました。しかし、最近では生皮を用いることもあるようです。