戻る 次へ


三  重

松坂木綿(まつざかもめん)

伊勢平野南部の御糸五郷多気郡明和町(上御糸・下御糸・松阪市東黒部・西黒部・機殿)は、古来両機殿を中心にいわゆる「みいと織」の製織で知られています。江戸時代頃には、 農家が副業として「みいと織」の生産高を増し松阪に集荷して松坂木綿として江戸に売りました。特徴であるシマは「島渡り」つまり舶来の柄で、鎖国以前に松阪から安南へ渡った 貿易商・角谷七郎兵衛のもたらした「柳条布」を国産化したもの言われます。

注:松坂木綿(みいと織)と伊勢神宮と深いつながり
伊勢神宮で最も古くから行なわれている神御衣(かむみそ)祭りは、松阪市機殿の上機殿とその隣接の東黒部の下機 殿において、古式に則り毎年5月14日に夏衣、10月14日 に冬衣を奉納しています。上・下機殿は、垂仁天皇の御代に倭姫命(やまとひめ)が御創定になられたと伝えられています。

伊勢木綿(いせもめん)

伊勢木綿は、伊勢参宮のみやげ物として津の街道で売られていました。
特徴は、糸で撚りが弱い弱撚糸で織られています。強く撚りをかけずに綿(わた)に近い状態の糸を使い、出来上がった布は洗っていくうちにのりが落ちて、糸が綿(わた)に戻ろう とするので、生地がやわらかくなっていき、ゴワゴワした感じが少なくなります。
柄は、無地・格子・縞など多種多様ですが、地域性が無く基本的な柄域は変わりがありません。地域による独自性が出るのは糸と染織と言われています。
伊勢木綿は単糸(たんし)という一番ベーシックな糸を使用しています。その単糸は、アメリカ製のサンホーキンスという最高級の綿を芯にした糸で、明治時代に倉敷紡績が開発した 「三馬」(みつうま)というブランドのものです。単糸は切れやすくて織るのが非常に難しく、いい綿を使った単糸でないと織る事が出来ません。 染めの基本は「藍染め」です。藍染めとは藍染め菌という菌を発酵させて染める方法です。

単糸の長所
・糸がやわらかいのでシワにならない。 ・やわらかくて肌触りが良く保湿性や通気性も良いので、使い込めば使い込むほど、味がでます。

藍染の衰退
明治頃、ドイツのバイエル社が石油からインディゴ(色素)を生成する方法を開発しました。インディゴで染めたものはインディゴが生地の上に乗っているだけなので色落ちしてしま います。(インディゴ100パーセントで染める代表は、ジーパン)
本来の染めは20〜30回くらい染めなければならないのに対し、石油から生成したインディゴは1回で黒く染まります。よって、染色業者が競うように藍染めをやめてしまいました。