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長  野


信州紬(しんしゅうつむぎ) _1

信州紬は、先染めの平織物です。経糸に使用する糸は、「さなぎが2個入っている繭からたぐり出した玉糸」か 「真綿の手紡ぎ糸」のどちらかの糸を使用します。緯糸には玉糸か真綿の手紡ぎ糸を使用しています。緯糸の打ち込みには、手投げ杼(ひ)を用います。絣糸の染色は、手括(てくくり)で行います。
緑色の繭を作る天蚕は、野外で櫟(クヌギ)や楢(ナラ)の葉を食べて育ちます。生産量は少なく、100%山繭で作った山繭紬はこの地方の特産品です。天蚕で出来た天蚕糸は、萌黄色の独特の光沢を持ち、通常の絹に比べて軽 くて柔らかい事が特徴です。糸の中に空気が入っている事から保温性は高くなります。また、染料が吸着しにくい性質がある為に濃く染まらない事を利用し、家蚕糸と混織し、後染めする事で濃淡をつける事も行われています。 日本では、江戸時代の初期から、産業政策として養蚕を各藩で盛んに行なわれていました。長野県でも養蚕が行われ、屑繭を原料とする紬の生産地でした。江戸時代から京都への出荷が行なわれ、明治に至るまで毎年のように 出荷さていました。地域特有の草木染材が豊富に自生していた事から、養蚕と併せて草木染めの技法も普及していました。着物用の「反物」と「帯地」で、様々な色柄のものが生産されていました。

「伝統工芸としての特徴 」
・かすり織物、しま織物又はこれに類する織物は次の技術、技法により製織すること。
・先染めの平織りとすること。
・たて糸に使用する糸は生糸(山繭系を含む。)、玉糸又は真綿の手つむぎ糸とし、よこ糸に使用する糸は玉糸又は真綿の手つむぎ糸とすること。
・よこ糸の打ち込みには、「手投杼」を用いること。
・かすり糸の染色法は、「手くくり」によること。
・使用する糸は、生糸(山繭系を含む。)、玉糸又は真綿の手つむぎ糸

―信州紬の種類―
1)上田紬(うえだつむぎ)
信濃の国は、都との交流が深く、その当時から絹の里と呼ばれていました。400年に近い伝統を持つ上田紬は、素朴さの中にも古典的な美しさを持つ紬です。
上田紬は、真田幸村の父昌幸が上田に築城してから真田織として、科皮等を農民に織らせたことから始まります。江戸時代に養蚕業が盛んになり、真綿から紡がれた糸を使う事で上田紬と言われるようになりました。四代将軍家綱 公の時代には京・大阪では非常に流行し、大阪には、「上田物産さばき所」が開設されました。また、結城紬(茨城県)・大島紬(鹿児島県)と並んで、日本の三大紬の一つです。