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和棉についての概略
和棉が初めて文献に現れるのは、永正7年興福寺大乗院に残っている「永生年中記」です。 「三川木棉」 と記されている「三河産の木棉」が商品として出回ったという記述があります。
三河地棉の特色は、黄色の花が咲き、花弁も黄色になるのが特 色です。また、他の棉種と較べて実も花も小ぶりです。ワタは漢字で「綿」または「棉」と表記 されます。一般的に「棉」は、植物としての状態のワタから 収穫されたタネ付きのワタまでをこの漢字で表記し、収穫したワタを「ワタ繰り (種を取る作業)」をして、 繊維を利用する為のワタを「綿」と表記するそう です。また、植物としてのワタに「木へん」が付く理由として、ワタは元々「一年草ではなく木」で有るためという説 もあります。
(東南アジアでは、三〜四 メートルにも成長します。)
世界には多くのワタの品種があり、「新大陸綿」(米綿やエジプト綿 等は、繊維が長い)と旧大陸綿・アジア綿(インド綿・日本綿 等は、繊維が短い)に 分類をします。ワタの品質の良し悪しは、「繊維が長いほど良い」と言われ、特に紡績(糸)用には繊維の短いアジア綿は向かないと言われています。現在では、 日本人が普段着用している綿製品の素材は米綿やエジプト綿などの新大陸綿で、日本綿・アジア綿は衣料には殆んど使用されていません。理由としては、エジ プト綿(長さ二八〜三八ミリくらい)で紡いだ糸は、日本綿(長さ一五ミリ前後)で紡いだ糸より細い糸を紡ぐ事が可能だからです。そして、布に加工した場合に 薄く繊細な製品を作る事が出来ます。米棉やエジプト棉などは、日本より高温・乾燥の気侯の中でよく生育しますが、日本では木は生育するものの秋以降の低 温下ではコットンボールがうまく弾けず、腐ってしまいます。しかし、日本棉は低温にも強く、霜に当たっても問題なくきれいに弾けます。また、米棉などに は「葉巻き虫」等の害虫が好んで寄ってくる為に害虫対策が必要ですが、日本棉はあまり虫が寄り付かないので無農薬栽培でも問題なく栽培出来ます。このよ うに、エジプトにはエジプトの気候風土に適したワタがあり、日本には日本の気候風土に適したワタがあります。そして、日本では明治の中頃まで盛んに栽培 され、昭和20年代には全国に約200種もありました。