戻る 次へ


その他の主な植物繊維

芭蕉(バショウ)
芭蕉は、バショウ科の多年草で、英名をジャパニーズ・バナナと呼び、中国が原産といわれています。高さは2〜3mで、幅50cm程の大きな葉を付け、花や果実はバナナとよく似ています。 熱帯を中心に分布し、耐寒性です。琉球諸島では、昔から葉鞘の繊維で芭蕉布を織り、衣料などに利用していました。沖縄県では、現在も芭蕉布として伝統工芸として継承されています。
芭蕉布は、500年の歴史があり、琉球王国では王宮が管理する大規模な芭蕉園で芭蕉が生産され、明や江戸時代に琉球を支配した薩摩藩への貢納品に含まれていました。庶民階級では、 アタイと呼ばれる家庭菜園に植えた芭蕉で、各家庭で糸を生産していました。現在では大宜味村喜如嘉が「芭蕉布の里」として知られています。一反の芭蕉布を織るために必要な芭蕉 は200本といわれています。・葉鞘を裂いて外皮を捨て、繊維の質ごとに原皮を分類します。(内側の柔らかな繊維ほど高価です)これを木灰を入れた大鍋で煮て、竹ばさみでしごき、 繊維質をより分ける精練作業を行います。芭蕉布一反織り上げるのに2カ月を要します。また、芭蕉の糸は薄茶色です。沖縄県外では、無地織・ティーチ(シャリンバイ)の濃茶色で絣 を織りあげた反物が一般的な芭蕉布と言われていますが、沖縄では琉球藍(Strobilanthes cusia)で染めたクルチョーと呼ばれる藍色の絣が好まれます。(近年では、紅型の特徴的な 美しい黄金色を染めるフクギやアカネ、ベニバナを用いる場合もある。)


葛は、新石器時代には使用されていたそうです。中国の江蘇省呉県草鞋山遺跡から葛布が発見され、論語にも葛布の記述があり、また司馬遷の史記には夏の衣として葛衣が使用された という記述があります。日本では、大宰府にある菖蒲が浦古墳で鏡に付着した葛布が出土したそうです。また、奈良時代の正倉院文書や万葉集に葛布を詠んだ歌があります。平安時代 の養老律令の延喜式に葛布の染色方法が記載され、平家物語にも葛布で作られた袴を指す「葛袴」が記載されています。江戸時代には、公家の直垂・狩衣・武士の陣羽織・裃・火事羽 織・道中着などに使用されました。
葛糸は、葛の蔓を煮て水に晒し、発酵させ繊維を取りだし、これを績んで糸にします。葛布は、緯糸と経糸の両方に葛糸を使用する場合と、経糸に絹や麻、木綿の糸を使用する場合が あります。現在では、葛の蔓を薬品で溶かし繊維分を取り出し、機械で紡績した糸で織られた製品や、葛粉をとったあとの繊維を糸にして使用する場合があります。
葛布は、葛の茎の靫皮繊維を糸にして織り上げた布です。江戸時代には日本の中で唯一の産地となった事から遠州地方で織られる葛の繊維を使った織物を「葛布」と称しています。 静岡県西部の掛川市周辺では、経糸に木綿・麻・絹などを使い、緯糸を撚りを掛けない葛の平糸で織っています。江戸時代には芭蕉布や晒布とならんで掛川の名産だったことが和漢三才図 会に掲載されています。九州地方で過去に織られた葛布は、経糸と緯糸の両方に撚りをかけていました。甑島(コシキジマ鹿児島)では「葛たなし」、唐津市では「佐志葛布」とも呼ばれてい ます。また、香川県・新潟県・島根県などにも作られた記録があるそうです。