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「絹通信#34」より
竹筬研究会が設立され、研修を重ねて約10年、その間には職人さんが亡くなられたり、ご高齢となられ、旧日本竹筬工業の技術をご教授頂いく事や竹筬の検査が困難になりました。しかし、試作竹筬を作成し、約40名の染織家の皆様に試織をして頂き「試作竹筬と織布展」を9回実施致しました。来年1月には第10回目を名古屋栄にて行う事になりました。技術的な伝承には、まだ少しの不安定な要素が有りますが、今後の研修の積み重ねでクリアして参りたいと思っています。ただ10年間を過ごしてみて、毎年悪くなってきている「良質の竹材確保」を解決しなければなりません。初期において、安心して使用可能でした九州福岡産竹材が全滅し、その後の京都産も期待外れに終わりました。地元の竹切り職人さんによる岐阜産や、竹林管理を依頼している奈良県の竹材は未だ結果が出ていません。竹切り職人さんや竹加工職人さんの問題点・温暖化による真竹の強度不足や密度の粗さによる粘り強さ 等 日本の山や竹材が抱える問題点が竹材の良否に繋がり、研究会が抱える最大の課題となっています。素材の竹材が良くなくては、技術も十分に生かせず結果的には竹筬が決して良い製品となりません。研究会の技術が向上し、素材の良否も少しわかる様になったこの2-3年は竹材探しが研究会の大きな課題となっています。 また加工においては、新しい加工機械が2台入り、丸竹から竹べらまでの加工においてはもう少しでクリア可能になりました。
 最近、竹筬羽製造に一番近いと思われる京扇子の扇骨(センコツ)の素材竹材店を訪問しました。真竹で堅い竹材という事では共通していましたが、芸能用の特殊な厚い扇骨加工所であった為に、筬羽用の0.3mmといった薄い加工は不可能でした。しかし、筬羽並みの薄い扇骨加工を得意とする島根県の情報を得る事が出来ましたので連絡を取りました。現状、扇骨は孟宗竹を薄羽に加工しているそうです。真竹での加工はしていないとの事でしたが、加工技術的には可能で有るとの事でした。そこで、真竹を使用しての加工試験という事で11月に島根を訪問し、竹筬が必要とする竹材の質を正確に伝え依頼しようと思っています。

2013.10.23 下村  輝
「絹通信#33」より
8月16日~18日 約10年前に、別府の竹工芸の訓練所で勉強、その後別府の工房で竹細工の仕事を続けている元会員が、講師として岐阜の研修所に来てくれました。鉈による丸竹割りから、刃物による竹剥ぎ行程の実技と、その他の実演を行って頂きました。その技術、正確さ、無駄のない作業に、10年間の経験と仕事を感じました。
私が、現在模索している竹材加工の機械化の調整に関しても、彼女からアドバイスを受けました。その1つは、竹の幅取りに関してです。現在8mm幅で形だけは、ほぼ正確に2枚の刃物で取れています。しかし彼女の指摘で、竹材の繊維の流れまで見ると、流れに逆らって無理矢理に幅を6mmにそろえていた結果となっている事が判明致しました。これでは、形は合格でも質では不合格という結果になってしまいます。よって、日本竹筬に原点に戻り、1枚の刃物で幅取りする機械に改良しようと思います。
しなやかさ、粘り強さ、割れにくさという竹筬羽の一番重要な基本を考えますと、日本竹筬の工程は無駄が無く、理にかなっていると改めて認識致しました。私の機械化についても、この事を忘れず改良と調整をして行こうと思います。彼女にも、今後筬羽引きに挑戦してみないかと提案し、快く承諾を得る事が出来きました。心強い協力者がまた1人増えました。

2013.08.21 下村  輝
「絹通信#32」より
24年度の最大の問題点は、竹材の質でした。25年度もこの問題が一番重要な課題となります。将来的には、自分たちで竹林の整備と管理を行い、切り出しまで行わなければ、竹筬に適した竹は入手困難になるのでと思います。
さて、丸竹から竹ベラまでの加工ですが、8mm幅での竹割は加工可能でした。次の正確な幅取りと約1mmの厚み加工に、今少しの機械調整が必要となりました。自分たちで竹ベラ加工する事になり、以前の節間の長さで選別していた竹材から、竹の太さ(直径)で選別する事が可能になりました。絹用の千○以上のうす羽には径の太い竹、木綿用の千○以下の厚羽には、比較的径の細い竹での竹筬羽という選別加工が可能になりました。これは、今まで職人技でカバーしてきた加工技術を原料でカバーするという今までになかった「竹筬の質」を高める加工の仕方です。研修を重ね、技術習得をしつつ、その技術を機械化して行く事を進めて参ります。

2013.06.21 下村  輝