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「絹通信#28」より |
25年度国宝重要文化財等保存整備費補助金申請のための基本各堂を検討する季節になりました。今年一番力を入れたことは竹材、今まで入荷していた福岡の竹が毎年悪くなり、ご高齢で最後の切り出し職人さん(竹材店を通してのお話で、直接の面識はなし)が人手の入っていけない竹林より、3~4年以上の真竹で、組織の密なねばり強く堅い竹を選別し、切り出す作業は大変で、さらに当研究会の幅と厚みと長さの竹ベラに加工し、1束500本で送っていただいていましたが、その500本の半数が幅不足や厚みの厚すぎ、皮に傷が入っていたりで、この竹材は練習用、自分用の筬、タテ糸本数1000本以下の筬密度の粗い木綿織物の試作竹筬用と限定しています。 昨年11月、12月に切り出したNPO法人の奈良の竹、地元岐阜県の竹切り職人の竹、どちらも節が5~6ヶ所の長竹で丸竹での入手です。電動丸鋸で節を落として円筒形の丸切り、それを16mm幅に割り、厚さ3mmの厚さに削ぐ、本来竹切り職人さん、または竹材店が加工する作業が会員の手作業でしております。 次に力を入れたことはこの作業の機械か、現在山気地検萩市の竹加工機械メーカーと交流、山口行が一つ加わりました。機械化の第一段階あは円筒形のまるたけを既定の幅に割る機会、次は二つわりと厚み3mmに削ぐ機械でほぼ目処がつきました。ここからが本格的な機械化で、粗挽きー>二番引きー>皮取りまでの義雄さんが使用された機械の再現で省力化と精度を目指します。 竹材は、まだ乾燥具合も含め、処理方法を模索中ですが、最近の九州の竹よりは、岐阜、奈良の竹には手応えを感じております。さらに一段の向上を目指し、新たな竹材店にも今年11月以降の竹で切り出しを御願いしました。 また、今年入会の若い世代の研修生の参加は心強い限りで、後継者育成という観点からも、研修と研究を積んで、旧竹筬工業の技術を次に伝えたいと思います。 今年度、竹筬研究会では、全国の染織組合や団体で染織研究生を育成されているところに対し、3枚程度の試作竹筬を提供し、この10年間入手できなかった竹筬になじんでいただき、竹筬の良さを再認識していただけるよう活動してきました。25年度も同様の方向で進めていきますので、染織研究生育成されている組合および団体は、竹筬研究会へご相談ください。 (2012.10.23 下村 輝) |
「絹通信#27」より |
文化庁直接の応援をいただけるようになり2年目に入ります。最近、残念な結果なのですが、その結果から見えてくる重要な事柄がありました。 以前に試織を依頼していた試作竹筬のうち、筬羽割れが生じた竹筬3枚が里帰りいたしました。1枚目は2008年8月納品の手績み苧麻使いの宮古上布の16羽/cm(使用筬羽千三)の竹筬A。2枚目は2010年10月納品の絹糸双糸、夏物着尺の60羽/鯨寸(筬羽千三)の竹筬B。3枚目は2011年8月納品、手紡ぎ木綿で4本通しの高密度の小倉縞、12羽/cm(筬羽千百)の竹筬C。竹筬BCの筬羽引きは同一の会員、Aは別の会員の製作、仕上げと組み工程はすべて会員の小嶋さんです。 この3枚を見比べると、4年前の精度基準、2年前、1年前の精度基準、そして昨年10月より文化庁直接の支援と要望を受けてからの精度基準がまったく違うことが実感できます。羽割れで大変な迷惑を掛けたことになるのですが、確実に進歩し、原因を検証でき、前進するための貴重な資料になっております。Aはその当時の会員の技術からみれば一番進んだ技術での竹筬、今の基準ではまったくの経験不足と甘い精度基準による竹筬製作でした。BCは少しの経験不足、そして皮の取りすぎの「身筬」、そして一番問題の竹材の良否の結果だと考えています。 11月13日より18日までの横浜・シルク博物館での「第8回試作竹筬と織布展」でその成果をご覧ください。今年度の目標は試作竹筬の「試作」が取れるよう研修と研究を重ね、前進したいと思います。 (2012.08.20 下村 輝 ) |
「絹通信#26」より |
5月の2012年度の総会も終わりました。昨年度は研究会にとり、大きな転機の年でした。 年度の途中、10月より文化庁直接の国宝重要文化財保存整備費補助金対象の事業に参加、その交付額6百万円。芸術文化振興基金の助成金4百万円のうち、9月までの約2百万円強を加えた8百万円強の大変大きな事業になりました。 それは今までの研究会の歩みと実績、そして今後への期待だと思います。具体的には一日も早くプロの職人さん、染織生産地の職人さんに対して提供できる技術水準を修得し、結果を出し、竹筬を復活させること。併せて、その後継者を育てること。その後継者が竹筬で生計可能で技術継承できるシステムを作ることだと思います。8百万円強の資金は特別会員の豊田義雄さんのご助言で、今までの銑、正直台、金板などの道具類を新たにプロ級の道具に一新、会員全員が研修できる体制になりました。一番の問題でした竹材入手、九州、京都、奈良、岐阜と当たった結果、地元岐阜県で、直接の竹切り職人である岡さんによる竹が一番良い閣下が出そうです。ただ問題もあります。丸竹を筒切り、割り、剥ぎ、煮る、乾燥という大変な作業が加わりました。しかしその分、竹筬羽にとり良質な竹材を確保するための貴重な体験と知識、及びその作業は今後の機械化を視野に入れた第一歩になり、筒切りのための電動丸鋸の購入、さらに竹材加工機械メーカーちび竹加工機製作の話になっています。 横浜の竹筬展では賛助会員の石井さんのご協力で動画がホームページでご覧いただけるようになりました。地元の竹筬展では後継者になりうる地元の染織経験のる若者が入会、会員の森さん、西尾さんの筬引きから仕上げ、組みの小嶋さんのラインが、森さん、西尾さんから、新人の小倉さん、そして小嶋さんに繋がり、機械化が加わりますと、竹筬復活がより現実的になります。 2012年度も文化庁直接の補助金6百万円の内定をいただきました。今年度は竹材の良否結果という条件はありますが、7月よりは各織物組合や研究会に対して、3枚程度の試作竹筬を提供し、ここ10年間、提供されていなかった竹筬をもう一度体験していただくこと、さらには染織生産地のプロの職人さんに竹筬を提供し、結果を出したいと思います。 (2012.06.21 下村 輝) |
「絹通信#25」より |
地元、岐阜県の竹切り職人さんによる、節が5?6ヵ所ある長さの丸竹、そして奈良のNPOの丸竹は現在、研修場で会員が電動丸鋸で節を落とし、長さ別の丸筒に加工、それをナタなどの刃物で一定の幅と厚みの竹ベラに手作業で加工しています。今まで竹切り職人さんや竹材店が加工し、納まっていた部門の加工作業ですから、その作業量と、竹材ゴミは大変で、将来的には機械化が必要、今年度は山口県の竹加工メーカーとの往復が多くなると思います。 現在は会員が手作業で時間を掛け加工、その原料の原点に近い所の作業を自らすることで、大変さとは引き替えの新しい発見や発想もあります。長さ32cm?40数cmに数種の長さに加工、丸竹を自ら加工することで、丸竹の太さも管理が可能、太さ別でも竹材選別加工ができ、用途(薄羽の竹筬、厚羽の竹筬)別に竹材を使用できます。例えば、節間は短い、径の太い根に近い竹材は薄い筬羽を使用する経糸本数1200本以上の竹筬を作る筬羽に使用すると、径が大きい分、限りなく皮を薄く取れることで、薄い筬羽でも丈夫な筬羽ができ、竹質も根に近い部分と先に近い部分がまざることなく、根に近い部分だけの一定の竹質での筬羽を作ることができます。竹林に人の手が入らず、竹質が悪くなっていく現状で、それに替わる質を上げる工夫や新たな加工技術の革新がなければ、以前のような竹筬の精度の維持はできないと思います。一つ加わった大変な作業なのですが、そこから見えてきた一つの成果でもあります。 24年度も国直接の助成金600万円の内定をいただきました。今年度は全国の織物グループ、織物組合の研修グループに試作の竹筬を無償提供し、竹筬の良さを体験し認識していただきたいと思います。まず厚い筬羽の経糸1000本以下の木綿のグループから始め、1000本以上の絹の織物産地の研修グループ、最終は織物産地の織職人さんの評価へと進んで結果を出したいと思います。 (2012.04.22 下村輝 記) |