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「絹通信#20」より 5月の総会も終わり、22年度の活動も始まりました。22年度には地元の瑞穂市で技術研修会を22回開催、一般会員は自分用の竹筬をほぼ製作できるようになり、また譲れることを前提とした上級者の会員2名は文化庁の要望でもある宮古・喜如嘉・久米島・久留米・小千谷・越後・結城といった染織生産地の織り職人さんの要望に耐えうる技術に挑戦できる一歩手前に来ています。そして竹筬のこと、研究会の活動を多くの皆様に知っていただき、併せて全国の各産地の織物および染織家の織物をみていただける年2回の「試作竹筬と織布展」も10月は横浜のシルク博物館、11月には瑞穂市の総合センターで開催できました。精度の高い機械組みが可能な「編筬機」も研修場に設置でき、歯車の補充と整備も終わり、会員の竹筬や試作竹筬の製作が可能になりました。ホームページの広報活動も会員の今村さんの頑張りで反応が返りつつあります。会員および応援していただいた方の年1回の会報「竹筬」第5号も6月4日に発行できました。22年度は特別会員の豊田義雄さんの指導と助言による道具の新たな整備と筬羽検査でもう一段レベルアップした竹筬製作が可能になったと思います。 問題もありました。一番重要な竹材の不良の割合が40%から50%になり悪くなりました。大分県の竹工芸の指導所で一番良い竹材店と推薦していただいた所の結果がこの状態で、竹材を切り出す現場の方が高齢で1人のみという現状は新たな竹材産地を探す必要性が緊急にあります。本当に竹林や山が荒れていること、職人さんの後継者が育っていないこと、原料から実感しています。 23年度のはじめ、新しい動きもありました。現在、研究会では芸術文化振興基金の助成金で活動しておりますが、今年度より文化庁の直接の補助金の対象として竹筬研究会の活動も考慮していただけ、補助金の予算を計上していただいております。ただ東日本大震災で被災した文化財の修理と復旧に多くの経費が必要なため、補助金の交付は未定ですが、当研究会の助成金を含めた支援と期待は、もう一歩前向きな方向で検討していただいており、一層の技術研修を重ね、応えていきたいと思います。加えて「杼製作」についても、当研究会で取り組みの要望があり、竹筬・杼その他の道具についても保存と技術継承をめざす研究会へ進んでいくと思います。 ★竹筬研究会の会報「竹筬」第5号を無料で送付いたします。 お申し込みは 会長の下村まで Tel&Fax 075-313-1348 (2011.06.22 下村輝 記) 「絹通信」号外 5月7日の総会も終わり、新たな気持ちで23年度の活動がはじまりましたが、喜ばしい事であり又大変な事でもある大きな動きがありました。総会に文化庁の近藤都代子様が出席してくださり、竹筬研究会に対して新たな提案と要望がありました。現在、当研究会の活動は芸術文化振興基金の助成事業として助成金をいただき、竹筬復活があと一歩のところまで来ておりますが、これを文化庁直接の文化財保存技術の保存事業との位置付けで考えていただけ、助成の予算を付けて、現在申請していただいており、東日本大震災での文化財の復興や修復に多くの予算が必要なため、この執行の時期が9月になるのか11月か、又は来年度になるかは未定の事なのですが、直接文化庁の応援を助成金も含めて、検討していただけたという事実は、当研究会の今までの実績の評価であり、今後の期待でもあり、心新たに、さらに精度の高い技術を目指して努力していきたいと思います。併せて、国選保存技術の「杼製作」についても、当研究会で取り組んでほしいとの要望があり、竹筬製作と併せて今後は染織における重要な道具の保存と復活と技術継承を目指す研究会へと進む事になると思っております。 会員の方々の協力と努力はもちろんの事、多くの皆様方の協力を得て、今後も竹筬を始めとして、染織における道具の復活を目指して活動してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。 (2011年5月11日 下村輝 記) 「絹通信#19」より 22年度3月の月2回(原則的に第1土曜と第3土曜日)の研修が始まりました。芸術文化振興基金へ申請いたしました23年度の助成金交付要望書の内定の返事もあり、大震災などの状況を考えれば、減額もいたしかたないと考えておりました私にとって、22年度より50万円もアップの400万円という内定の数字は、基金の研究会に対する今までの実績と23年度の期待と要望を強く感じます。23年度は竹筬が復活する年、そんな気持ちで日々の研修と研究会の運営をし、答えを出すべき年度だと思います。 22年度は本当に技術の精度が高くなった1年でした。現役の筬羽引きの職人さん、豊田陸雄さんが亡くなられたあと、その後、幸いにも、元筬羽引きの職人さんで、筬羽引きの機械を設計され、製作され使用されて精度の高い主に千四の筬羽を製作されておられた豊田義雄さんの正確できびしい助言と検査を直接受ける機会に恵まれ、その助言と検査に日々の研修と技術で応えられた会員の森武さんと西尾一三さんの筬羽引き、そして現役の筬組み職人である大橋滋さんの指導のもと、小嶋孝幸さんの焼きを含む仕上げ工程とアサノ式編筬機による機械組みの充実は日本竹筬工業の良い竹筬が作られていた時代の竹筬の精度に近い竹筬ができつつあると考えております。今、私の染織仲間である染織家が鯨寸67羽の試作竹筬を製作しています。この竹筬で試織結果にOKが出れば、織物産地の試織用竹筬に挑戦いたします。新たな問題もあります。原材料の竹材の質、そして部材の筬組みのための張り撚り式による特殊撚糸の綿糸の入手が困難になりつつあります。伝統産業、伝統技術の世界では、今まで当たり前に入手できたものが、ある日突然に入手できなくなることも当たり前になりつつあります。一層の技術研修はもちろん、ネットワーク、情報発信、情報入手、情報交換など重要と考えます。 23年度もどうぞよろしくお願いいたします。 (2011.04.21 下村輝 記) 「絹通信#18」より 22年度の研究会の研修も、あと2回になり、ほとんどの正会員の方の自分用の竹筬製作も、最後の組み工程に入りつつあります。また、23年の芸術文化振興基金への助成金交付要望書の提出も終わり、その結果の返事待ちの状態です。この1年間の研究会の研修システムの中で、一番の朗報は、正会員・森武さんの竹筬羽引きの精度の高い技術の習得です。元・竹筬羽引きの職人さんで、制度を要求される千四百の筬羽を引いておられた特別会員・豊田義雄さんの一番きびしい筬羽検査に、まだ100%の合格ではありませんが、95%の精度の高い竹筬羽を引かれる森さんの現在の技術は、23年度の約半年の日々の研修と結果の積み重ねでクリアーできると私は確信を持って期待しています。すでに竹筬研究会・普及部で試験も兼ねて段階的に竹筬をお譲りしていますが、併せて、今まで研究会が製作した試織用竹筬の結果、そして森さんが引かれた筬羽が100%の確率で義雄さんの合格がいただけ、検査の必要性がなくなった時、研究会は次の目標、文化庁の助言と要望の織物産地(宮古上布・芭蕉布・久米島紬・久留米絣・小千谷縮・越後上布・結城紬)、そして八重山上布・大島紬などの試作竹筬に挑戦し、試織を依頼し、各産地が必要とする竹筬を製作できて初めて、本当に竹筬が復活したといえると思います。製作過程の問題としては筬羽引きの省力化、機械化をめざし、滋賀県の高島扇骨、京都の扇骨製造業者さんと連携をはかり、昔、竹筬羽の故郷であり当研究会の研修場所である岐阜県穂積町(現・瑞穂市)で唯一機械化されておりました義雄さんの筬羽引き機械の復活、また良い竹筬には良い竹材が必要ということで、去年末に京都の嵯峨の竹材を当っております。仕上げおよび焼き工程の精度も、森さんの筬羽引きの合格数により一段と向上すると思います。機械組み用のアサノ式編筬機のための歯車も製作でき、機械は調整しつつ組みができつつあります。いろいろな面で、竹筬復活が現実のものになりつつあります。中日新聞の岐阜支局から竹筬と職人さんについての取材依頼もあり、地元の応援と支持も良い形で得られつつあります。 23年度の当研究会の目標は、良い竹材の確保、竹筬の作り手と使い手との連携、竹筬製作のための銑をはじめとする道具類の確保、そして竹筬作りを支えるネットワークの構築です。それらの実現も含めて技術の研修を重ね、竹筬復活を目指したいと思います。今後ともいろいろな情報とご意見、ご参加をお願いいたします。 (2011.02.23 下村輝 記) 「絹通信#17」より 10月の横浜シルク博物館、11月の地元岐阜県瑞穂市での「試作竹筬と織布展」も終わり、残り3ヶ月間、23年度に向けて、さらなる試織竹筬の制作に力を入れ、竹筬復活を目標に研修を重ねていく覚悟です。22年度の一番の成果は特別会員の豊田義雄さんとの交流で、1月に94歳に成られ、ご高齢ではありますが、月2回の岐阜での研修日の行き、または帰り、時には行き帰りともご自宅にお寄りして、会員が引きました筬羽の評価や道具も含めた竹筬製作におけるあらゆる助言をしていただき、その評価は大変厳しいものですが、その成果はもう少しで竹筬復活の一歩手前の状況、義雄さんの絶対的な評価をいただけた時、竹筬は技術的には復活したといえます。22年度の研究会の活動を振り返りますと、8年目にして、本物の道具、竹筬の重要性、そして的確な助言による経験と研修を積み重ねてこそ本物の竹筬とは何かということを自覚する1年でした。道具では一番重要な刃物、銑と金板の使い方、今までの銑は形だけをまねた刃物だったとはいえ、本物の竹専用の刃物職人さんに出会え、砥石もその本物の銑に合った青砥を購入できました。正直台もしかり、義雄さんの実物と助言をもとに会員・森武さんが試行錯誤し、自分に合った完成度の高い正直台を目指しております。筬羽規格表も約60項目ある約半数の30項目が、義雄さんのアドバイスで訂正が必要になりました。竹材も日本の山林が荒れている現状では決して良い状況ではなく、竹筬羽に適した竹材探しが今後も続きます。問題と困難はありますが、一つ一つをクリアーし、技術の積み重ねと確かな技術の裏付けがあって、初めて竹筬が復活したといえ、その日がそう遠くないことも実感しております。 新しい動きもありました。2回目の地元での竹筬展を開催したことで、地元瑞穂市でボランティア活動をしておられる方のご助言で地元の市会議員の方、商工会、文化財保存審議会の方といった行政の方達に竹筬に対する認識を持っていただくことができ、来年度は地元の応援も少しは期待できるような状況になりつつあります。また、竹筬羽製作の技術を生かした考古学で埋蔵文化財の調査に使います形を写す用具・真弧(まこ)用の竹筬羽の製作依頼もあり、竹筬製作はもちろんのこと、以前から続けております絵絣台と合わせて研究会の研究テーマとして挑戦し、その技術を保存し継続していきたいと思います。また、いろいろな情報、ご意見を当研究会にお寄せください。 (2010.12.20 下村輝 記) 「絹通信#16」より 第4回「試作竹筬と織布展」は横浜シルク博物館で10月19日から24日までの6日間開催、第5回は竹筬研究会の研修場所のある最後の竹筬及び竹筬羽の故郷・岐阜県穂積町(現・瑞穂市)の総合センターあじさいホールで11月18日から20日までの3日間、2回目の「試作竹筬と織布展」を開催いたします。横浜での竹筬展には2枚目での試作竹筬による試織布を3名の方達に出展していただけ、その中で都機工房の志村ふくみさん、洋子さんの試織結果は10反以上の実績報告をいただいており、試織結果の織布裂も6枚お送りいただき、一段と充実した竹筬展になりました。以前には3枚割れました竹筬羽の精度も一段と高まりましたし、筬羽引きの岐阜市の正会員・森武さんの技術の向上には、まだ2年ではあるのですが、目を見張るものがあり、充分期待でき信頼できる力量だと思っております。第1工程の筬羽引きは森武さん、第2工程の焼きと仕上げ、そして第3工程の筬組みは金筬の製造をし、筬の役割を認識し、竹筬復活に情熱を持ち、仕事として継続していく心で研修を積み重ねている若い筬職人の小嶋孝幸さんのラインで竹筬復活が現実のものになりつつあります。今年度、組織した製作普及部の竹筬も5点出展、この竹筬でも試織をお願いし、10反以上の実績結果を得て、初めてゆずれる竹筬が製作できたとの考えで、研修を重ねており竹筬復活と販売に手応えを十分感じております。併せて23年度の目標、それが精度の技術的な最終目標なのですが、文化庁が認定され指定されている染織産地の宮古上布・芭蕉布・小千谷縮・越後上布そして結城紬、加えて大島紬の竹筬の精度を要求される産地の試作竹筬に挑戦し、試織をお願いし、10反以上の結果をいただけた時、素人集団の竹筬研究会がプロ染織産地の織り職人さんたちの技量に応えられる技術を持ったプロ集団の竹筬研究会になれたと思いますし、染織の世界で認知されたと考え、販売ということが現実になると思います。また、どうぞご意見ご要望を研究会にお寄せいただきたいと思います。 (2010.10.30 下村輝 記) |