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「絹通信#72」より
11月沖縄で選定保存技術公開事業「日本の技体験フェア2019」が開催、参加団体は建造物12団体・工芸技術11団体・製造技術6団体・ 芸能5団体の34団体で、竹筬研究会も昨年の熱海に続き工芸品技術区分で参加いたしました。小学生や子供達を対象にした体験フェアで、その案内書の漢字にはすべて 仮名が添えられ、各団体には実演と体験のコーナーがあり、当研究会の実演は銑(せん)引き、子供達の体験は竹筬作りの基本、丸竹の鉈(なた)割り作業、丸竹に左手 で持った鉈を当て、右手の木槌(きづち)で鉈を叩き、目的の幅に割っていく体験です。会の研修では、鉈と木槌での竹割り作業は丸竹の割り口に割り幅の印を付け、 小口から順番に割ります。しかし、この方法での小口割りは、印付けの所は正確な割り幅ですが、下方は竹繊維の流れで広くなり不安定で、その割り竹を機械剥ぎしますと、 広すぎると機械が停止し、ゴムローラーが傷み、その都度調整が必要になり仕事になりません。以前は割り竹での竹ベラ納品でしたので、節落とし・割り・剥ぎ作業は不要 で指導された事もなく、手割りの小口割りが続いていましたが、和傘のDVDで竹の手割りは半割りし、そしてまた半割りを試みるのが竹細工の基本だと知り、今回小学生で初 めて体験実験をしました。半割りですと子供の力でも見事に鉈が下まで落ち、ほぼ正確な半割りが出来ました。箸の幅まで半割りした竹を「持ってかえりますか?」と尋ねる と全員が喜んで持って帰ってくれました。
次回の東京展では竹箸までの作業が出来れば、さらに喜んでくれ、竹細工に興味を持ってくれると確信いたしました。文化庁が選定保存技術に認定し、その保存団体に認定され、 この技展に参加するどの団体も技術伝承と後継者問題があります。「日本の技・体験フェア」は子供達まで裾野を広げ、広く文化財を守り続けてきた技術を公開し、体験し、 入り口を広げていく活動だと思います。
筬(おさ)と読める人は稀(まれ)で、その用途の知識も殆ど0と言える業界用語です。今回の出展には筬羽を利用する型取りのゲージ「真弧」も展示、建造物の棟梁の参加が 多く、「真弧」の問い合わせと棟梁との名刺交換が竹筬以上に多く、コスト等の課題が多くありますが、竹筬羽の可能性は大いにあると感じました。

12月20日  下村 輝