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「絹通信#71」より |
物作りで、人・資金・場所は要件ですが、次に重要な要件は原材料、竹筬の竹材の良否は筬の良否、会の今、一番苦労している課題です。 放置竹林が広がり、 整備された竹林は竹の子需要のある孟宗竹の竹林で、竹筬に使用する真竹の竹林は、今まで10か所以上当たりましたが、大分の竹林業者の1軒のみ、あとは竹工芸の個人作家の個人管理の竹林のみでした。 したがいまして、竹材入手は荒れた真竹の竹藪から竹林整備との交換で切り出している現状で、未だに竹筬に最適な竹材に出会えていませんし、それを判断する技量もまだありません。「竹筬」の映像では地元の竹から、次は熊本県阿蘇と言っており、残っていた職人さんたちの手持ち竹材がなくなってからは大分県の竹工芸の技術指導所が入手されている福岡県朝倉市の竹材を仕入れていましたが、その竹材 店でも、ご高齢の竹切職人さん納品の半 数が不良竹と承知で取引され、我々の会に納品の竹ベラも幅不足で厚み不良が半分という状況で返品で 清算していました。 竹材の条件は3~5年の真竹、川竹より山竹、径は10㎝以上か以下なのか、我々に知識はなく、身筬はだめと言われましたので、皮を薄く取れる10㎝以上が良いと考えますが、太過ぎても組織が荒く、 まただめと考えます。弾力があり、薄くても筬打ちで割れにくい竹を試行錯誤して当たっています。青竹のまま筬羽に加工するのか、煮て白竹乾燥するのか、業者のように丸竹のまま煮るのか、竹ベラに してから煮るのか、以前の職人さんの竹材は竹ベラを簾状に編み、堤防で昼夜天日干しで約1ヵ月、細い竹で編んだ日の当たらない所は青みが残っており、煮竹の感はなかったと思います。 今、竹ベラで煮竹にしているのは青竹のまま研修場の2階に保管していると、いくら切り時を考慮しても、虫が入りますから、防虫が第一の目的、乾燥竹での保管が良いということが第二で、今は切り出した 丸長青竹を自分達で加工して竹ベラにして使用しています。この竹材の加工処理の良否は時間経過を経て判断することになります。 11月23日記 下村 輝 |
「絹通信#70」より |
研究会を継続して、技術を修得 し、竹筬の復活を目指すには、第一 に竹筬復活の意思を持ったメンバ ー、次にその活動のための資金、そ して技術研修や原材料、道具類を
保管する場所が必要です。当初は 幸いにも、講師である最後の筬引 き職人さん、祖父江の豊田陸雄さん宅の6畳の作業所と12畳の居間での研修が5年間ほど続きました。
地元、瑞穂市での第1回「試作竹筬 と織布展」が、2009年、その前年に 陸雄さんが亡くなられ、少しの間は 研修は市の会館の教室を使用して いましたが、原材料や道具類をどうするのかの問題が生じ、 その間に地元の染織家・伊藤真弓さんに借家を当ってもらい、また地元の会員・近藤てる子さんにも作業ができ、竹材や道具が保管でき、さらに車が4~5台駐車できる家屋を当ってもらい、さらに会員にも声を かけた結果、一宮市の鈴木貴詞さんからは保管家屋提供のお話もあ り、またある会員からは購入資金の提供のお話もあり、いろいろな物件 を見て検討した結果、近藤さんに見つけていただいた物件が穂積駅から何とかギリギリ歩ける距離で、 研修場と保管場所を兼ね、車が4~5台駐車できる物件が2008年7月に購入でき、現在に至っていま す。 その当時の助成金、芸術文化振 興基金では、その家屋の賃貸料は認められず0円。電気、水道、管理 費、固定資産税は全額持ち出しです。その後、研究会の資金から賃貸料は出ましたが、電気、水道、 その他を支払えばやはり持ち出しです。1988年築の上下で約60坪の作業所兼事務所+上下で約40坪の居宅ですから、2008年にリフォームされたとはいえ、2017年に「竹筬製作」 が選定保存技術に選定された時点での不動産業者の家屋の査定評価 は使用価値は評価してくれましたが、資産価値は築30年、リフォーム後10年の物件評価は0査定で家屋の資産評価減は約1000万円という ことになります。保存団体に認定後は月々の賃貸料は約10万円が支払 われることで、今までのマイナス分 をプラスにしていけますが、今後10 年はかかりますし、その間の修理費の出費を考えれば、さらに5~ 10年の期間が必要です。私生活でもそうですが、家屋や土地 を確保することは賃貸であろうが、購入であ ろうが、負担の大きな最大の課題 です。これがどのような形であれ、成立し存在していないと研修も、 事業も成立しません。これも次世 代の後継者にとって大きな課題ですし、私自身と私の子供達にとって も課題で現実の問題なのです。 ※第16回「試作竹筬と織布帛展」は 2020年1月24日㈮~27日㈪京都で 開催。 詳しくは1月の絹通信№71で お知らせします。 10月23日記 下村 輝 |