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「絹通信#67」より
6月1日平成31年(令和元年)度の総会を岐阜県瑞穂市の研究会場で開催致しました。昨年度の伝承者養成は第1と第3土曜日の研修を22回実施、各自の進み具合に合わせた各研修と、原材料確保のために入手した丸青竹を筒切りし、節落としして、割り機械で竹ベラ加工する技術は確立出来ました。それを湯炊きし、網代に組み、研修場の2階で乾燥と、試行錯誤しております。
竹材は、岐阜県産を3か所で切り出した約100本を筒切り後、詳細に分類し、品質試験へと活かしたいと思います。竹林調査では、岡山県真庭市を訪問、竹林の荒廃は全国的で絶望的でありますが、良質の原材料の確保は最重要課題で今後も調査は続けていきます。
制作竹筬の使用状況の調査では、阿波太布・沖縄南風原の織元・琉球絣の組合・那覇伝統織物の組合・喜如嘉芭蕉布織物工房・知花花織の組合・読谷山花織の組合・昭和村からむし後継者育成協議会・米沢の織元さん達・川越唐桟手織りの会などで使用状況の調査と竹筬要望書を含めて意見交換し、制作竹筬の使用結果にほぼ問題はなく、再度の追加、要望に応えるべく、会員に竹筬羽の政策を要望していますが、まだ十分ご要望に応えきれていないのが筬羽供給の会の現状です。
一昨年より、3名の会員に月々の支払いをして、仕事外の時間に筬羽引きの研修を依頼、一つの仕事で10年といわれる技術の世界では、まだ研修半ばで、会で買い取り竹筬に組める竹筬羽には至っておりません。技術は経験と時間の積み重ねで習得でき、今暫くの時間が必要です。併せて、真弧(マコ)用の竹筬羽を必要とされている第一合成の宮垣さんと工程の機械化を共同で模索しており、省力化で数量・単価の問題を解決し、竹筬羽の精度向上を図り、竹筬復活と後継者育成に繋げたいと思います。
研修発表の場である竹筬展は、昨年11月にシルク会館で「第15回試作竹筬と織布帠展」を6日間開催、今年度は染色の本場京都西陣での開催を計画しています。7月には会報が出来上がり、竹筬及び研修や調査の映像のDVDも出来き、ご要望の方に頒布する予定です。令和元年の竹筬研究会の事業予算額は997万円と大きな数字です。それは期待でもあり成果も求められており、研修と活動と運営を進めていきます。
6月21日 記 下村  輝

「絹通信#66」より
3月、会員3名で沖縄を訪れました。2組合に試作竹筬を納入し、以前に各組合に納入した竹筬の評価や要望を聞くためです。
琉球絣の大城廣史郎工房では納入した「よろけ竹筬」の今後の課題で、帯の織帛は「よろけ」の表現が今一つで、一番の原因は「よろけ竹筬」を上下に滑らかに移動できる筬框操作の作成と使用する絹糸の太さと織物密度との関係です。筬密度、すなわち鯨寸間何羽の筬で、使用する筬羽の厚みは何〇の筬羽で組むのが最適か、筬設計の話になります。喜如嘉の芭蕉布では帯の作品を多数拝見し、帯用の竹筬の要望が有りました。帯の場合、糸作りの段階から、タテ糸の太さ・単糸か双糸か・より方・より回数も含めて今後の課題で、幸い9月21日・22日の「東京スピンニングパーティー」でお目に掛かれた折、ねん糸のことも含めた糸使いで糸を決め、筬密度を設計し作成いたします。以前に古い竹筬を提供いただいたものは、両耳付近の竹筬羽が芭蕉布の結び目等で竹筬羽が削れ、糸スジが付き、竹筬にとっては過酷な使用状況で、竹筬は消耗部品といえます。
読谷村花織では、以前、組合の竹筬要望はなかったのですが、各個人では竹筬使用の要望がありました。那覇伝統織物組合と琉球絣織物組合、前者は以前に3枚の試作竹筬を納め、竹筬展にも作品を出展、今回は追加の竹筬納入と要望と評価を調査できました。琉球絣組合は、要望のありました夏物の駒糸使いの着物用の竹筬納入です。1cmあたり15羽と18羽を各2枚の計4枚。この夏物の駒糸使い紗や絽の薄物、土屋順紀氏の紋紗の筬設計は一般的な着物用の筬設計とは全く逆の筬構成で製作し、試織し、結果を出し、より適正な構成で竹筬を製作いたします。今回の場合、それぞれの羽数と同じ銘柄の筬羽使用と厚羽での各2種を納めての結果待ちです。この組み合わせで唯一なのが大島紬用の竹筬で、15.5ヨミの羽数に厚羽で組み、一般的な筬の天地が8cmのところ7.5cmと低く、タテ・ヨコの点絣が合うことを最重点にした組み合わせ竹筬で、泥染めの黒ということで、筬羽の焼きは濃い赤焼きではなく、竹の色を残す白焼き羽で作られています。ちなみに一般的な筬設計は15ヨミの着物幅40cmで1200本のタテ糸が並びます。その時の使用筬羽銘柄は100本~200本薄い筬羽で組みます。その分、糸や節が通りやすくなりますが、両耳が不安定になり、ヨコ糸の入れ方と機張りの加減が重要です。研究会の竹筬羽はこの使用筬羽の銘柄を表示していますが、今までの竹筬羽は表示がなく、ヨミ数は同じでも、銘柄=筬羽の厚みが違う羽での竹筬である認識も必要です。
4月17日記   下村  輝