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「絹通信#65」より
2月4日付で、2019年度の国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金交付申請書を京都府を通して文化庁長官へ提出いたしました。総事業費は997万円余で、交付を受けようとする補助金は980万円です。以前の名称は、国宝重要文化財等保存整備補助金で、来年度からは上記に変わり、今までの保存に活用事業費という考え方が加わり、今後の時代が求める補助金の方向と思います。国の考え方の方向性と会の具体的な考え方と運営をお伝えし、助言いただく2月16日の研修会日と17日の2日間。文化庁文化財第一課工芸技術部門調査官・生田ゆき氏と京都府教育庁指導部文化財保護課美術工芸・民族・無形文化財担当・向田明弘氏のお二人に岐阜の研修場にお越しいただきました。
1日目は、会の作業や活動・状況を知って頂くために丸青竹の割り・竹ヘギ・湯炊き・乾燥・銑引き・幅取り・羽切りをご覧いただき、最後は小嶋さんの竹筬編整機による機械組みと筬の仕上げをお見せしました。その後、私と小倉で来年度からの文化庁文化財第一課工芸技術部門の国庫助成事業の書類等マニュアルの説明を受け、提出書類については申請書や報告書の新しい内容と要件、補助事業では要作成書類や総会、補助事業視察の内容と要件で従来通りです。2日目は、朝一番に祖父江の集落をご案内して、以前の研修所・豊田陸雄さん宅や大正7年に光照寺前に建設された竹筬の功績者 栗山頼資記念碑・長良川支流の堤防に竹ベラを網代に組み竹干しした土手の風景を見ていただきました。その後、研修所において、下村・野村・小倉で来年度の文化庁の補助事業の基本的な考え方と今後の方向性をお聞きしました。補助金事業の中で活用事業費の具体的な内容は、昨年10月に熱海市で開催された子供たちを対象にした参加型の「日本の技体験フェア」で、全国各地の32の文化財を陰で支え続けてきた修理技術や材料・道具を作成する技術が一堂に集まり、体験コーナーや実演コーナーがあり、各種保存団体と交流や情報交換の持てる機会です。来年度は、沖縄で開催と聞いています。このような事業は、各団体でも小規模ながら展開できるようです。
今回の意見交流の結論的な事は、竹筬製作で「染色の世界での社会的な貢献・製作技術での伝承と後継者の育成」を竹筬製作技術の活用で新しい用途の開発や需要の開拓、機械化による精度と効率化で発展的に研究会を運営していけるよう補助金を活用してほしいとのご意見でした。この考え方と方向性を少し文章にまとめて2月末締め切りの「第13回読売あをによし賞」に応募いたします。 *5月25日・26日のまつもとクラフトフェアは、講堂が改修のため使用でず応募しておりませんが、前日の安曇野。後日の岡谷での講習会は計画しております。
2月21日記   下村  輝
「絹通信#64」より
8月の「羽切り」の機械化は、筬羽は8cm〜9cm、真弧用は20cmまでの「治具」の試作ではほぼ問題ないと思います。機械切断時の羽竹の束ねは指や糸ではなく、 100円ショップの梱包用フィルムを使用しています。手による「羽切り」は羽揃えした羽竹を筬の外天地+2mmの長さに指で押さえて切断、切断時の逃げを考え、切断枚数 の半分の所で筬羽を180度返して、+・−の調整をして金框で高さを揃え(筬羽の幅)のバリカキ、その後のミガキ後「焼き入れ」になります。
万力でしっかりはさみ、固 定して金框から外し、天地の高さの8cmや9cmに鉋を掛けます。幅の高さ揃えの立鉋掛けや天地揃えの鉋掛けは竹の繊維の流れに逆らう工程で、長く経験の重ねられた職 人さんならではの技術がいる作業です。 羽切り前の銑引きされた羽竹の幅6.4mmの幅取りや厚みの傾きや平行度の精度をはじめとして、金框の締め具合、万力での締め具合 などが不十分だとこの鉋掛けは筬羽の羽割れにつながる作業です。機械でもし外天地の8cmや9cmに完璧に羽切りできれば、天地を揃える縁仕上げの鉋掛けは必要がなく なりますし、また金框での高さ揃えのバリカキの立鉋掛けも考慮中です。
機械での羽切り時、羽竹を1枚の板として切断する前工程として、今は2台のバイスを使用し、 金框と同じ原理で長い羽竹を固定し、フィルム巻きしています。巻く前のバイス固定時に竹繊維の流れに沿っての金框での傍仕上げ(立鉋でのミガキ)と同様の方法で、 高さ揃えのバリガキができないかとその2台のバイスの構造と一定の高さに削ることができる鉋との組合せを考えています。
金框の試験も、真弧用の20cmには今は対応で きず、宮垣さんが現在の金框の寸法から図面を起こされ、3Dで拝見し検討しています。寸法は今までの手作業の精度と職人さんの経験と技術でクリアーできたのでしょう がアバウトな数字です。羽切りでの性格な天地の寸法や幅決めの精度が上がれば、金框の精度と役割が変わるのではと相談しています。
和傘職人の中村屋の工房も2度寄せていただき、竹加工の実技と岐阜和傘のDVDをいただき、夫婦・男女の職人さんの凄い技術と凄い機械加工の映像で、丸青竹の割り方 や手順、機械加工では骨4本分に手割りした竹の余分な厚みを削り取る「肉き」機械、その後の1/2の小割り器、穴あけ機、さらに骨1本分にする1/2の小割り機、そして 親骨の4ヵ所を一度に削る骨削り機械や機械ロクロでのロクロ作り、目切り、目穴あけ、目すきの機械工程は、凄いの一言、技術伝承はもちろんのこと、この凄い機会を 残すことも重要と思いました。 12月20日      下村  輝