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「絹通信#63」より |
羽切工程の今は、長尺の青丸竹を切り出してもらい、会で節落としして、16㎜幅に割り、竹剥ぎした竹ベラを湯焚きし、乾燥する作業が加わりました。その竹を二つ割りにして、最初の銑引き・荒引きし・幅取り、二番目が一番重要な二番引き、三番目の皮取り、四番目の上引きで厚みが決定、「千三」以上の薄羽は仕上げ引きもあります。 銑引き幅取りは最初6分を削り取り、反して残り4分を取ります。1回の工程は2度の羽を通す作業で、上引きまでに10回(仕上げ引きは12回)の刃物を通します。これだけの作業工程を経た長い状態の薄い羽竹を羽揃えして、重ねて筬の外天地(8㎝や9㎝)+2㎜の長さに切断するのが羽切りで、用具が羽切り台です。押切りの原理で重ねた羽竹を必要な天地の長さに切るのですが、刃物は銑引きに使用後の刀のように細くなった羽を利用、刃は片刃研ぎ、少しだけ両刃的にしていますが、羽切りで切断面が逃げることを見越して羽切り台は制作してあります。左手で羽竹の束を保持し、右手の指で押さえての切断で、大変技術と経験いる作業です。職人さんの半分の枚数を切ることも、会員にとって大変で、この羽切り切断が上手に出来なければ、羽割れの原因になり、天地の不揃えになり、筬羽が不良になり、今までの作業が無になります。今、人に流せる試作竹筬の羽竹の切断は西尾さんにお願いしていますが、この技術の伝承と次の後継者の育成の必要性を感じます。 10月の研修でこの「羽切り」を西尾さんに講習頂き、会員が挑戦致しましたが、非常に大変で難しい作業でした。会の今年度の目標は、会員の筬羽引きの技術向上と提供竹筬の筬羽製作ですが、その次の羽切り工程もクリアすべき重要な技術で、その技術を教授できる日本竹筬工業の職人さんは0です。羽切り技術の習得も会の次の課題で、機械化はその1つの方法で試作を始めていますし、幅取りの機械化は岐阜の和傘職人、中村さんに相談をかけています。 10月21日 下村 輝 |
「絹通信#62」より |
今年度より、私と第一合成の会員・宮垣さんとで機械化部門を作りました。幅取りと銑引きを唯一機械化された故・豊田義雄さんのお話しや映像より、その必要性を感じてのこと。その機械は日本竹筬工業に声を掛けた時には廃棄されており、経験のない我々が再現するには設計図面や機械製作者さがしと問題は山積みで困難で、義雄さん以外、実現できなかったことで、私達には実現不可能かもしれませんが、真弧(発掘物の実測を形取る道具)用の筬羽を必要とされている第一合成さんや竹筬研究会にとっても、すべてが手作業ではコストと製作枚数、精度で現状では多くの課題があり、機械化の方向は作業の簡素化、簡易化で絶対に必要と思います。
日本竹筬工業の職人さんの各部門の技術を習得するには10年と話され、たとえ職人の教授があったといえ、竹筬製作に会員が掛ける時間を考えれば3年以上かかる各技術だと思います。義雄さんの機械の精度は1/100、熟練した職人で2/100、機械が熟練工より精度が高い、そこには竹の特性と職人さんの作業方法の限界があります。手作業での幅取りや銑引きでは最初6分を削り取り、次に残り4分を竹を返して削ります。竹は先端が細く、根元の方は太く、その方向で繊維が通っていますので、返して削るときには太い方から細い方へ刃物が繊維にそって内側に入る結果が2/100です。機械はローラーで引き込んだり、突き出し棒で押し出すので、いつも先の細い方から、元の太い方へと方向が一定で刃物が内側に入ることはなく精度は1/100です。機械の調整やセットは手作業の時も同様に必要ですが、機械は同じ動作を行いますので、誰でも少しの経験で作業できることになり、簡素化と簡易化が効率化になり、コスト削減と精度向上になります。 手作業の技術習得には時間と経験の積み重ねの日々の努力の結果で、良い結果が出て技術が初めて評価されます。機械化は時間と経験があって、加えて機械の技能があっての機械化実現で、困難と失敗の連続だと思いますが、まず銑引きされた筬羽を8cm〜9cmに切断する技術のいる「羽切り」から挑戦いたします。 2018.08.27 下村 輝 |