戻る | 次へ |
「絹通信#52」より |
12月東京・六本木で21世紀鷹峯フォーラムが開催、竹筬研究会と本業の下村ねん糸の2ブースで展示参加、ライトニングトークでも竹筬とねん糸で意見発表いたしました。テーマは100年。日本全国でこの課題解決に向け努力する「ひと」、良い取り組みを推進する「機関」、次世代に伝えたい「ほんもの」素材の紹介で、主催は一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン(COJ)+100年後の工芸のために普及啓発実行委員会+オールジャパン工芸連携京都/東京/金沢実行委員会。 対話式のブースが約15店、各コーナーは近い将来に枯渇が懸念される工芸素材や道具(用具)、すなわち絶滅危惧の素材と道具を紹介し、日本全国で連携して取り組むべきこと、将来を拓く実際の手だてを考え、活動されている方の活動をひろめ促進するプロジェクトの一環で、出店は群青、本朱、胡粉。木桶。国産コットン・伯州綿。日本刺繍針。国産漆の漆掻き職人。漆精製。漆刷毛。研磨炭。日本の漆と漆器等の展示と交流と情報交換の場になりました。 各プロジェクトの紹介と発表では動物由来の素材活用の連携で獣の皮、特に鹿皮で「墨」と「膠」。ほんものの顔料として天然顔料。つくる道具として織物に欠かせない機の一部品・竹筬。「歴史を絶やさないために」新たな取り組みとして、友禅や絞り染の下絵用のあおばな紙作り等が19時過ぎまで続きました。 COJでは絶滅危惧の素材を残す未来の姿として、無理のない形で素材と道具が残り、つくり手が100年後も使うことができる仕組み作りを目指して活動、500人のスペシャリストの名簿作成、工芸素材・道具のレッドリストの作成とネットワーク作りされており情報収集やアンケートを実施され、竹筬研究会も協力し情報交換していきたいと思います。お問い合わせは私か直接COJ(tel:03-3573-3339)に。 竹筬にも問題が多く、竹材が今一番の課題、将来は膠、芯竹、木綿の編み糸、編み糸は筬羽の厚みにより、何種類もの太さを張りよりで撚糸し、和楽器の弦や和紙を漉く折の簾を編む絹糸と同じ、撚糸業界では一番先になくなるより方で、染織業界の分業の中の糸商の下請の世界ですから、業界に身をおく私も実情がつかめない世界です。だれが、どこでねん糸した糸、名前や職人さんの年齢は、13年前の竹筬羽と同様、ある日突然その製造が止まり、全国の竹筬屋(組み屋)さんは廃業。竹筬ではなくてはならない染織産地は竹筬の再生産ができなければ竹筬屋さんと同様の道を辿ることになります。そうならないためにも竹筬研究会は研修を重ねますし、今回のプロジェクトも大切だと思い参加いたしました。 (2016.12.21 下村 輝) |
「絹通信#51」より |
11月の横浜・シルク博物館での第13回「試作竹筬と織布展」では、喜如嘉の芭蕉布、久留米絣、久米島紬、宮古上布、小千谷縮などの重要無形文化財に指定された保持団体や保持者(人間国宝)、日本工芸会などで活躍されている方々の作品を約40点展示でき、技術的にはほぼ習得できているのではと思っておりますが、さらに研修と実績を重ねて、最終の確認は大島紬産地での試験で合格がいただければ、竹筬の製作技術の面ではその保存と伝承ができたと考えます。 大島紬はタテ・ヨコの点で模様を表現する十字絣もしくはT字絣、使用する竹筬は女物で15.5ヨミ、着尺幅約40cmで1240本のタテ糸が通ります。一般の産地の竹筬なら1300か1400の薄羽の筬羽で組みますが、大島紬だけは1200以下の厚羽で組み、天地も一般が8cmのところ7.5cmと低く、筬羽の焼き具合も赤焼きではなく、黒染め糸使用が主流ですので白焼きです。精密な絣合わせを第一に考えて、竹筬作りをしなくてはならない織物産地で、来年度は大島紬の竹筬をめざし、奄美での竹筬調査を実施したいと思います。技術的には、ほぼクリアーなのですが、最大の問題点は良質な筬羽に適した竹材の入手です。 10月でご報告した通り、別府の2店の竹財は期待以下、宮崎の竹材も、その後、会員が試験した結果、期待以下でした。孟宗の竹林は筍のために整備されますが、真竹の整備林はほとんど存在せず、荒れた竹林からの切り出しが主で、真竹の4年物、径がほぼ同一で、切る時期は一番虫に食われにくい11月から、竹筬用に同質の割れにくい竹を約100本となると、現状の竹工芸用の竹材の世界では、今までの結果から、まだ1軒も満足できた竹材はありません。初期の福岡の竹材店の職人さんがご高齢の方で、筬羽の竹材を知っておられ、加工もしておられた最後の方だったかもしれません。他の竹材店では、竹筬用の竹など、まったくご存知ではなく、竹ベラ資料を提示して加工依頼するのですが、加工でさえ未だ満足な結果は得られておらず、質は会員が試験をして評価を出しておりますが、質も未だ満足な結果は得られておりません。研究会では、竹筬製作の折、竹材の悪い分、チェックを厳しくして、割れなどの問題が生じないよう注意して製作しています。これからも、竹材探しが研究会の最大の課題です。皆様の竹材の情報をよろしくお願いいたします。 (2016.10.24 下村 輝) |