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「絹通信#46」より |
11月に入り、今年の竹の伐採の季節になりました。今まで多くを切り出し期待していた岐阜の竹が会員の筬羽引きの3年間の結果が今一つという残念な結論になり、この竹材は練習と密度の粗い竹筬制作にしよういたします。 今まで、岐阜、京都、奈良、福岡、静岡、愛知と試した中で一番結果の良かった奈良の竹材を今年も確保するため、11月末に奈良市の南、大和郡山市の山寺・東明寺に岐阜の竹切り職人・岡さんに同行を願い、会員の関と小倉と初参加の私の4人で岐阜より2トンのトラックで奈良へ出向きました。前日の雨で竹林はぬかるみ、急坂の道路の突き当たりの山寺で空荷ですと車がスリップする所で、NPO法人が整備伐採している竹林との思いでしたが、現状は放置林状態でした。以前にも岐阜の竹林を見に行きましたが、人の手が入らず竹材も利用されずの放置林でNPO法人が竹林の荒廃と侵食で伐採し、現地で処理し、土に帰るのを待てばよいのでしょうが、今回のお寺の竹は利用できないゴミの部分を現地処理することは出来ず産廃業者に処分依頼しなければならず、会員の労力に加え処分費とトラック運搬費、人件費がかかり高価な竹材になります。良い竹材はどこの竹が一番なのか試験も兼ねて研修を重ねていますので、竹材コストも今は無視して活動していますが、NPO法人がこの竹林を整備できない理由が分かります。今回伐採した竹は直径10cm前後を約40本、トラックに乗る長さに2つ切りして約80本、根に近い節間の短い部分と径の細い先の部分は産廃業者に費用をかけて処分してもらいました。80本の竹は岐阜の研修所にて、早速、節を落とした丸竹にして、割りを入れて保存、順次16mmに割り、ヘギ加工し、湯炊きをして、保存し、使用しようと思います。 今回、竹林まで行き、伐採からヘギ竹の竹ベラまで、自分たちで経験してみて、今まで電話1本で竹ベラが確保できていましたが、近年はどの竹材店に依頼しても満足な竹ベラが出来てこなかった現実は加工職人さんの問題が一番とは思いますが、あの荒れた放置林より良質の竹林を切り出し、処理し、加工して500本を1束にして送り出すことはいかに今では困難であったか今回の竹の伐採で少しは理解できます。奈良の竹林は地下茎も未整備のため新しい竹は育成せず、来年の竹は望めず、会員が出向き、伐採から始めることは、今後は無理と考えます。合わせて別府の岩尾竹材店には、青竹、乾燥竹、焼き入れした竹の3種で加工依頼、佐藤さんは放置林からではありますが、竹筬用の竹ベラを、島根県益田市の須藤竹筬店にも竹ベラ加工を依頼いたしました。その他のルートでも竹材確保に力を入れたいと思います。 (2015.12.17 下村 輝) |
「絹通信#45」より |
今年の2月には、竹工芸に力を入れている大分に、再度竹材の調査に行き「日本の竹材」と「管理されている職人さんの状況」と「新しい竹材店との出会い」が有りました。その後、別府の竹の専門家、小谷さんと佐藤さんに岐阜の研修所にお越しいただき、竹材の勉強と助言で会員一同、竹材の知識がより理解できるようになりました。 その竹材を切り出す最適な季節11月、12月を迎え、別府と島根県益田市の竹材店に注文を出し、今年の竹材を確保し試験製作し竹材の良否と適性を判断したいと思います。加えて大和郡山の竹林へ会員が出向いて切り出し、今までで一番結果の良かった奈良県産の竹材を今年も確保したいと思います。 ここ3年間、地元の竹切り職人さんに、青丸竹で切り出していただき会員が「節落し」して竹ベラ加工までし、試作していた期待の岐阜産の竹材が筬羽用としては今一つ残念な結果で、再度の竹材探しが研究会の課題として来年も続きます。 その後の久留米絣技術保存会との交流では、竹筬製作の要望と絵台種糸用筬の依頼があり、絵台用筬の唯一の会員・角浦さん作成の試作竹筬が納まり、試練での結果待ちです。今年度の目標でした、個人染織家の方から産地の織り職人へ試作竹筬をお渡しし、試験していただくことで結果が出てくれば、最終の確認目標である大島紬の産地の職人さんに試織していただき、結果を出して竹筬復活に繋げたいと思います。 また、来年1月16日、17日の沖縄県立博物館での第12回「試作竹筬による織布展」に向けて、試作竹筬を会員が奈良県産の竹材を使用して製作いたしております。沖縄で2回目の竹筬展でもあり、竹筬を一番必要とされている方の多い染織産地でもあり、各組合が研修生育成に力を入れておられる沖縄の各織物組合に試作竹筬での試験をお願いしたところ、全組合で試織の協力をいただけることになり、今各組合ごとに要望される竹筬の詳細をご相談し、各産地の織物に一番適した竹筬を提供したいと思います。那覇伝統織物、宮古島織物、喜如嘉芭蕉布、久米島紬、竹富町織物、知花花織、与那国伝統織物、読谷山花織、琉球絣、石垣市織物の各組合と首里高校の染色デザイン科に対して各3枚の竹筬を作成し提供する事になります。1月の沖縄店には、作品が間に合わないかもしれないのですが、来年11月頃の横浜シルク博物館の公募展「第24回全国染織作品展」の期間中に開催を予定している第13回「試作竹筬による織布展」には沖縄各地の織物作品を展示される事を願って、日々研修を重ね竹筬を作成しています。 (2015.10.21 下村 輝) |