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「絹通信#44」より
昭和51年に文化財保存技術保持団体に認定され、事務局は高知県いの町の全国手漉和紙用具製作技術保存会の会員さんが、先週、各地より4名京都へ来られ、和紙作りに必要な用具、簀(す)製作に必要な簀編用の生糸の編糸の製作相談でした。私の本業が生糸のねん糸業。約30年前にも東予手すき和紙振興会から同じ依頼を受け、当時全国唯一の編糸製作者、簀編の高知の有光弘範さん宅を訪ね、そのねん糸工程のお話と使用されてました高知の藤村製糸の生糸の相談を受け助言をいたしました。有光さんの後、岐阜県の方が製作、今回のお話ではその方もやめられ、岐阜県羽鳥市の簀編の方が唯一受け継がれているようですが、まだ十分安心という状況ではないようで、再度のお越しとご相談です。
編糸の現物と撚糸機の資料を拝見、撚糸は張撚式でこの方式は撚糸業界においても一番早く無くなりつつあり、和楽器の弦の撚糸や京都では最後の一軒で後継者は0という現状です。竹筬製作にも、その組糸(編糸)は木綿ではありますが同じ方式での撚糸、次回は製作が困難になると思っています。次回は私流の方式で竹筬の編糸を撚糸することになると思っておりましたし、以前から個人レベルでの撚糸機の開発をして対処しなくてはいけないのではという思いで動いておりますので、今回のご相談は具体的な良い機会だと思います。
和紙や染織品といった伝統的な産業における用具や道具は竹や糸の組み合わせで作るものが多く、その材料の竹や糸の確保はどの業界においても、職人さんの後継者0が多く、後継者育成も実施されていますが需要が縮小している業界では、経済活動としては困難な世界といえます。竹筬作りもそうなのですが、業界の違いを越えて共通で原材料の管理や加工をしてくれる職人さんや人材を探し育成する必要性をあらためて強く感じます。9月初めに再度関係者がお越しになり、共同で撚糸機の現物調査と問題点の改善で羽島市の編糸製作と簀編の職人さんのところと編糸用張撚機を保存している美濃市の美濃和紙の里会館を訪問することになりました。筬がなければ染織品がないのと同様、編糸と竹ヒゴがなければ簀はできず手漉和紙もないということで生糸の編糸撚糸に協力したいと思います。

(2015.08.21 下村  輝)
「絹通信#43」より
2015年度の総会が終わり、事業計画が動き始めました。技術研究会は22回、原則第1と第3土曜日13時〜17時頃まで、岐阜県瑞穂市生津外宮前1−120の研修会場で実施、見学大歓迎で研修の実体験が出来ます。
今年度も国宝重要文化財等保存整備補助金の内定を頂き、「竹筬製作・修理」と「杼製作」の技術保存と継承を続けて活動したいと思います。
具体的には
@道具の見直しと製作・初期の形をまねた正直台を含めた各道具は、研修を重ねた結果、理に叶い、使い易く機能的に進化させ、更に機械化を進めて行きたいと思います。
A竹筬確保と加工・竹筬の今一番の問題点と課題で今年も九州を含む竹材産地の調査訪問を重ね、竹林を整備し、管理し、竹筬に適した竹林を切り出して頂ける職人さん、竹材店に出会える様行動したいと思います。
B織物産地での意見交換と竹筬調査・徳島県の太布や沖縄県の芭蕉布等の竹筬要望に対し技術的に応える事が可能になりましたので(竹材的な不安は有りますが)、今年は久留米絣を初めとして、沖縄の各織物組合の研修生の為の竹筬を、順次提供していく為に筬羽を作り始めております。
C竹筬製作と製作竹筬による試作・今年度の竹筬展は沖縄本島で計画、竹筬の要望の強い喜如嘉・宮古を初めとして、那覇・久米島・竹富町・知花花織・与那国町・読谷山花織・琉球絣・石垣市の各織物組合に対し試織を御願いし、竹筬展に作品を出展して頂き、製作竹筬の評価をして頂きたいと思います。
D展示会「竹筬による織布展 甦らせるぞ竹筬」 沖縄を含む全国50名強の染織家の皆様の竹筬による織布を展示し、竹筬と竹筬研究会の現状を報告したいと思います。時期は1月又は2月の予定です。
新年度から新会委員も1名加わり、一からの竹筬作りも始まりました。6月20日の研修会には、久留米絣の森山様・7月4日には高知の「竹虎」山岸様がお見えになります。また、会報「竹筬9号」が出来ました。ご希望の方はご連絡を頂きたいと思います。

                                       
(2015.06.22 下村  輝)