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「絹通信#40」より
平成26年度の第11回「試作竹筬と織布展」は平成26年11月20日から24日まで、横浜・シルク博物館の2年に一度の公募展「第23回全国染織作品展」の期間中での同時開催で、2度目の竹筬展ということで、連日100名強のご来場があり充実した毎日でした。回を重ねることで、その内容と竹筬の精度が確実に上がっていることを実感していますし、会員製作の竹筬の精度も高く、今回は会員が自主的に試作した波筬、よろけ筬、仮筬も出展、特別会員の大橋さんのお話では日本竹筬工業でも、よろけ筬は製作しており、今後の特別研修の一つに加えたいと思います。
平成27年度の竹筬展は、竹筬の要望の一番多い沖縄での開催と再度の竹筬調査を兼ねて計画しており、次回も新作でのご出展を50名の皆様には今からお願いしております。再度の試作竹筬を要望されておられる方も10名ほどおられますし、それ以外の新しい方の試作竹筬も、研究会として応えていきたいと思っています。
その一つとして、先日、徳島県の阿波太布製造技術保存伝承会から、地機3台用の竹筬が壊れ、新しい竹筬の要望がありました。まず、今使っておられる竹筬と筬框、そして太布の糸が届き、検討し対応していきたいと思います。太布の原料はコウゾの樹皮より繊維を取り、糸を績み、糸車でより掛けして、地機で織りあげます。研究会としてもコウゾの糸は初めて、つなぎ方も含めて繊維の太さは筬羽の厚みを決定する上で重要ですし、筬の羽数は1cmあたり4羽と5羽と粗く、竹材の問題があっても挑戦しやすい竹筬です。送られてきた竹筬の傷み具合から、框の構造を含めて竹筬を製作し、框のことも対応していかないといけないと思いました。一度、徳島行きして意見交換し、より良い道具を作り、使っていただきたいと思います。伝承されている技術、それを支える機(ハタ)の一部分である竹筬、その重要性を再確認する最近の出来事で、今後の竹筬研究会の重要な一つの活動テーマであると思います。
研究会では、以前にも新島の真田織の竹筬で協力したこともありますし、今後も伝承活動や昔の作業を今に伝える活動をされている研究会などでの竹筬や道具類の要望に協力していきたいと思います。11月から12月に入り切り出された竹材が、研修所に入りつつあります。竹筬展も終わり、竹筬にとって良い質の竹材であることを願い、年末を過ごしております。

(2014.12.19 下村  輝)
「絹通信#39」より
11月20〜24日まで第11回目の竹筬展を横浜のシルク博物館で開催、2年に1度の博物館の公募展「第23回全国染織作品展」に合わせての関東での竹筬展です。試織をお願いしている皆様の新作が37点、旧作5点と会員自作の竹筬による約10点の計約50点と竹筬資料、現状をご覧いただけ、併せて公募展の入選作品約70点も鑑賞できる良い機会です。
 研究会のここ2年間の新しい試作竹筬の提供は約10点未満、それは今一番の難問、竹筬の質と筬羽検査が唯一できる職人・豊田義雄さん(96歳)の、ご高齢による検査不可能な状況で、その後は会員の自主検査で試作竹筬を製作し提供しています。特に今回の竹筬展では会員の西尾一三さんの薄羽の1500の筬羽での18ヨミの宮古上布と組替えでの竹筬ですが、鯨寸間49羽の小千谷縮の織布に注目しています。18ヨミは今の宮古では、績める苧麻の太さは14ヨミが限界なのですが、昔の18ヨミでの糸を手持ちの方よりご相談を受け、竹筬2枚を失敗(割れること)を覚悟で、薄羽の筬羽引きに挑戦し提供したうちの1枚で無事出来上がった宮古上布です。研究会としては竹材の不安はあるものの技術的には自信につながる前進だと思います。
 竹材は11〜12月に竹切りが始まり、どの産地が適しているのか、2〜3年の経過と結果待ちではありますが、福岡、島根、奈良、岐阜の使用結果から、より良い竹材へ1歩ずつ前進していると思います。研究会での私の仕事になりました、丸青竹の竹ベラまでの加工機械の改造と調整により16mm幅に全員が割った竹ベラを薄く剥ぐ機械化では職人さんから納まっていた剥ぎ竹よりも優秀な状態に剥ぐことが出来ます。また今は会員全員で苦労して16mm幅に割っている作業を機械化し、会員が楽にきれいで正確に割ることができる改造と調整にも、ほぼ目処がつきました。機械化で以前の職人さんと同等、またはそれ以上の仕事が楽で簡単に加工でき結果が出せれば、日本竹筬工業で唯一、筬羽引きの皮取りまでを機械化されていた義雄さんの機械の再現を次の目標にしたいと思います。そして良質で竹筬に適した竹材探し、加えて産地の職人さんによる試作竹筬の挑戦と結果を出すことだと思います。

(2014.10.17 下村  輝)