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「絹通信#38」より |
最近、奄美大島、小千谷縮、神宮用の織り職人さんよりの竹筬製作依頼の相談が入ります。それに応える力量には今一歩の竹筬研究会ですが、その現象の訳は、日本で唯一、竹筬羽を生産し、全国の竹筬屋さんに提供していた岐阜県瑞穂市の日本竹筬工業で竹筬羽製造が中断、会社は解散いたしました。筬羽製造工程は三つの分業で、仕入れた竹ベラを銑引きして羽切りまでの筬羽作り、その筬羽を焼き、面取りする仕上げ工程、そして全国の筬屋さんの組み工程で竹筬。その内の仕上げ職人の森助一さんの死と後継者0。生産が中断し12年目、その間に新しい竹筬は生産されておらず、竹筬を必要としている染織産地では、
手持ち竹筬を大切に使用されているのですが、竹筬は機の一部品、産地の職人さんにとって竹筬は毎日使用する消耗品、商品として織物を毎日生産、そのための竹筬の再生産がなければ、織物の生産も将来的には止まることになります。金筬が代用できる織物もありますし、代用できない織物もありますが、金筬があるから安心というのが産地の一般的な考え方です。国内の金筬の金筬羽の現状は竹筬が辿った道と同様です。昨年、結城紬の筬の調査では金筬が主流、竹筬がなくても金筬があるから大丈夫という考え方が主流で、電話1本で入手でき、それを支えている原料の鉄材、それを加工するところ、金筬を組み上げる金筬屋さん、高齢化や後継者のことは0になるまで
竹筬同様気づくことはないと思います。竹筬研究会は竹筬復活を目標に研修を重ねていますが、まだ職人さんの試作竹筬には今一歩の努力と時間が必要です。竹筬研究会は試作竹筬による織布展を過去10回開催、この11月20日~24日に11回目を横浜・シルク博物館で開催、竹筬展は約50名の方に試織をお願いした作品を展示し、併せて竹筬の資料や実技実演を含む発表報告会です。そこには、まだ産地の職人さんの試作竹筬での試職には至りません。技術的には、ほぼクリアと思いますが、いま最大のネックは原料である竹筬に適した良質の竹材の確保です。それと併せて、産地の職人さんと話をして、試作竹筬に挑戦しようと思います。 2014.08.28 下村 輝 |
「絹通信#37」より |
先日、テレビで「京都・伝統工芸の危機 行政が弟子入り支援」の事業紹介。具体的には「西陣絣」の職人さんと、その熟練の技を受け継ぎたい若者とのシステムで、京都市・京都府の染織工芸課が主体に弟子入り希望者を全国に募り、後継者に悩む職人とのマッチングを行い、派遣先を決め、半年〜1年間、月16万円の給与を行政が支払う「弟子入り支援事業」でした。徒弟制度による後継者育成や技術伝承が困難になった現在、若者を職人に育成でき、生活していける一つの試みだと思いました。 竹筬研究会も国の支援を受け、竹筬復活を目指しています。そこには職人さんよりの技術修得と伝承があってこそ復活があり、趣旨に違いはありませんが、運営のシステムは少し違います。会員は定年退職し年金をいただいている60代以上の方、子育てが終わり染織を楽しめ関心を持ち勉強できる時間がもてる主婦や女性の方、そして現役の仕事を持ち竹筬に関心を持ち場合によっては仕事として考えている若者2名。その若者が竹筬職人として生活していける新しいシステムを構築していくことが、良い竹材探しの後の11年目に入った研究会の1番の課題になると思います。 日々活動しております会の1年間の報告書、会報「竹筬」8号が出来ました。ご希望の方には無料送付中です。なお月々の現況は『染織情報α』の偶数月の広告欄の「絹通信」か、竹筬研究会のホームページをご覧ください。 (2014.06.23 下村 輝) |