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天蚕復興を願って

 令和3年6月、家蚕の真綿及び真綿紬糸の調査で福島へ行き、その帰路で伊達市霊山町を訪問。その後の11月27日「りょうぜん天蚕の会・天蚕真綿紬糸の研修会」になりました。 私の仕事は絹糸のねん糸と販売で、天蚕につては1991年12月号の月刊誌「染織α」に「私の天蚕誌」で約30年前に天蚕の状況を書きました。今の天蚕の現況は当時に比べ、すべてが約十分の一、継続 できているのは穂高の安曇野市天蚕センターだけと言え、後発の生産地は長野、群馬、富山、広島、愛媛、福島の霊山町、そして個人です。
 天蚕は雑誌や新聞によく取り上げられ、話題性と地域の町おこしの面では大変有利ですが、繭の高額化と繰糸の困難さ、糸の希少性で単価は1㎏100万円前後になる超高価格の糸です。この糸価では使 用者側からは買えない、試織もできない、使用できても1反の着物にグラム単位の少量しか使用しない縫取り文様の着物が昔からの使用法で、この利用法では中国の天蚕生糸でも代用ができ、国内の天蚕 糸の需要は激減しました。その結果、糸の生産地での製品化が試みられており、天蚕生糸100%の着物がYouTubeで1000万円、2000万円と紹介されています。この着物がポンポン販売できているとは思えま せんし、販売できたとしても、次の天蚕生糸が供給できる生産地はほぼゼロに近く、対応も困難、更に次の撚糸や製織工程も解決できていない課題です。又、年間の取引量が1反や2反という事は糸価格 で200万円の売上で、一過性の話題に過ぎないのではないかと危惧致しております。そんなこともあり、霊山の皆様とは繰糸の天蚕生糸だけではなく、繭層の薄い繭や汚れ繭、出ガラ繭等を100%利用でき、 殆ど製造されず販売されていない天蚕真綿紬糸の利用を進め、製品化し、地域振興に貢献できることを願い交流を始めました。
 無償提供いただいたそれらの繭の真綿作りは精練業者による酵素精練で、 その技術は確立できています。その真綿を繭状のまま、個々に真綿を広げず、電動フライヤーで紡ぐと、天蚕真綿は初めての方や小学生でも簡単に天蚕真綿紬糸になります。あとは、織物の目的に合わ せた太さに紡ぐことですが、これは練習と経験を積むことで解決できます。 又、同じ伊達市の保原町は日本で唯一の真綿(単繭真綿)の生産地で貴重な技術です。この真綿を使用して作られる真綿紬糸は、 結城紬の「つくし」による手紬糸を除いて、国内の電動フライヤーによる真綿紬糸は山形の1軒が最後だと思います。したがって全国の紬織物産地の使用真綿紬糸は、ほぼ100%中国の帽子型真綿(玉繭真綿) による真綿紬糸と言えます。この伊達市の真綿作りと真綿紬糸紡ぎの技術を残し活用するためにも霊山の皆様との交流は大切だと思い継続していきたいと思います。