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国産繭がつなぐ着物の未来プロジェクト
| 2025/12/25 下村 輝 |
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2025年(令和7年)7月の大日本蚕糸会の「蚕糸業の現状について」の報告書は危機的で、衝撃です。2024年の国内の絹糸需要に占める国産繭・生糸のシェアは僅か0.13%で、養蚕農家数は134戸、繭生産量は38トン(生糸換算で約7トン)。群馬県が38%、栃木県18%、福島県18%の3県が主で、その国産繭を生糸に出来る製糸工場も5社のみ。今年2025年の統計も、さらに生産量は減少と思います。その養蚕、製糸の現状を踏まえて、養蚕農家から、着物をお召しになられる消費者の皆様までをつなぐ試みとして、「国産繭がつなぐ着物の未来プロジェクト」を仲間と立ち上げ、行動を始めました。0.13%の減少を止め、さらに増産を目指すには、繭に補助金導入がされても、輸入糸に比べ割高な国産生糸が、その高い価格に見合う、質の良さや違いが、消費者の皆様に認識でき、理解され、価格的にも納得していただける着物や帯が出来ないと、評価されず、評価されないと、繭から生糸への製糸生産が止まり、物とお金の循環が止まり、0.13%からの更なる減少を止める事は出来ません。それでは志のある若者の後継者育成も困難になります。 国産繭を使用したい時に手織り染織にとって、現状の一番の問題点は、国産繭での真綿と真綿紬糸の入手です。真綿の生産は福島県伊達市の保原町のみ、真綿紬糸についても、本場・結城紬でつむがれる真綿手紬糸が唯一で、他産地では入手は困難です。 国産真綿紬糸の入手が出来なければ、結城紬以外の紬織物の染織家・生産地は国産繭での真綿紬糸の使用は不可能という事で、これが国産真綿と真綿紬糸の現状です。 その結果、全国のつむぎ織物生産地は、国産より割安な、中国産の真綿紬糸の使用がほぼ100%です。その中国の真綿紬糸も、近年は大変入荷が不安定で、為替も関係して、入荷のたびの価格の暴騰が止まりません。さらに、その真綿紬糸の中国の生産工場の減少も、近い将来の大きな問題として、気にかかる課題です。将来的には国内生産が数年前に廃業した、岡谷市の最後の国産真綿紬糸の状況を、今から視野に入れ、真綿紬糸の確保を、紬の生産地は対処しておかないと、その存亡に関わると心配しております。国産繭が無くなれば、保原の真綿も無く、保原町の袋真綿が無くては、結城紬は真綿紬糸の手紬糸も製織も出来ません。繭や真綿の生産が確保でき、真綿紬糸を生産出来て、全国の紬織物生産が成り立ちます。 従いまして、国産真綿紬糸が価格的にクリア出来ても、国内で真綿をつむぐ人が0では、真綿紬糸の入手は困難です。これが生産地の現状です。 そこで、今回の着物で、参考にしたのが、大島紬、黄八丈、首里織、与那国織といった、タテ糸・ヨコ糸共に生糸使いの織物です。さらには、奈良の正倉院に現存する絹織物、絁 (あしぎぬ)です。それらを考慮して、今回は碓氷製糸さんには乾繭で自動繰糸の生糸200中と生糸60中を依頼し、200中+60中の2本合糸で、生糸260中のねん糸を作り、酵素精練処理して、染織家に着物を依頼しました。又、宮坂製糸さんには輸入生糸では出来ない生繭の自動繰糸生糸200中を、福島県の秋蚕で依頼し、白度の高い生糸が出来ました。 これらの試みは、現在、繰糸されなくなりました赤城の節糸(上州座繰りの太い生糸)のタテ・ヨコ使いでの着物も参考に、価格を考慮して、座繰り生糸ではなく、一度に太い自動繰糸の生糸200中と細目の自動繰糸の生糸60中を2本合糸して、ねん糸、精練、染織して着物と帯に致します。より回数は沖縄の与那国織の経験で、タテ糸にも、ヨコ糸にも使用できる右170回/mです。帯もという事になり、染織家と相談して、200中の原糸と60中の原糸の組み合わせで、帯の糸も作ります。併せて、着物では200中+60中の2本合せの精練糸の白糸で、タテ糸・ヨコ糸使用の力織機による、友禅・小紋・絞・紅型等の染色品のための、生地精練ではない、白生地も視野に入れて、試作いたします。そして、その次は、染織家・織物業→卸→小売→消費者の流通を、養蚕農家→製糸→糸加工処理を加えた、消費者までの流れを繋げ、繭・糸作り方と着物の使用者を結ぶシステムを作り、日本の繭を守り、着物の未来につなげたいと思います。
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