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筬(おさ)の概略


織物を織るときに経糸(たていと)を通す櫛状のものをいいます。英語でリード(reed)と呼ばれています。これは、竹や金属でできた筬羽が櫛の歯のように一定間隔に並べられ、両端が固定されたものです。竹製の筬のほかには、金属を使ったものがあり、既に大正10年ころから出回るようになっていました。機能的には同じなのですが、使い勝手としては、竹筬のほうがはるかに使いやすいのです。

織物を織るために筬が織機に取り付けられている状態では、筬羽と筬羽の間に経糸が通されています。筬が前に動くことによって筬羽が緯糸を既に布となっている側へと強く押し付けます。そして緯糸は、固く締め付けられて新しく布が増す(織られる)ことになります。つまり経糸(たていと)を交差させたその間に、杼(ひ)にセットした緯糸(よこいと)を差し込むことで布が織られてゆくわけです。
筬の役目は、経糸の密度を一定に保ち、織物の巾を決め、杼=緯糸が通る道をつくり、緯糸を打ち込めるようにすることです。きちんとした布を織るために、とても大切な道具です。
筬には、竹を薄く削った羽が等間隔で嵌め込まれています。使う糸や織りたい布により、荒めの筬から細かな筬までを使い分けます。細かい筬では、羽の厚みは0.35ミリの薄さにもなります。よって、筬羽の数が多ければ多いほど沢山の経糸を使った細かい織物を織る事が可能です。
この細かさの単位を「算(よみ)」と呼び、着尺の反巾1尺(約38p)の間にどのくらいの隙間があるかという単位になります。一算を38羽とし、一番細かい筬で18算まであるので38×18算で約680羽となります。(筬の単位の基準は、1算=40羽が主流)です。仮に、1羽に2本の経糸が通る場合は(鯨尺での18算筬)、経糸は1360本となります。これは、大島紬でいうところの一番細かい12マルキになります。算の単位は10算から18算までありますので、一番細かい18算の筬羽の厚さは0.252mmとなります。

竹筬の起源は、不明ですが、古くから使用されてきました。一方の金筬は、ジャガードや力織機が導入された明治期にヨーロッパから一緒に伝えられました。力織機の進展にともない金筬が普及して行っただけではなく、耐久性の点から手織りにも金筬が浸透していきました。現在では一部の伝統織物や竹筬の愛好家を除いて、大半の人が金筬を使用しています。手織でも現在、主に金筬が主流となっていますが、伝統的な手織においては竹筬へのこだわりがあり、調達上の問題が生じています。