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「絹通信#73」より
本誌がこの3月号で休刊、「絹通信」も雑誌でのお知らせは終わりますが、下村ねん糸の新たな形での情報発信は継続していきたいと思っています。2002年に竹筬の 情報を本誌で発信、翌年「竹筬研究会」結成して17年目に入りました。その間「竹筬製作」が選定保存技術に選定され、竹筬研究会がその保存団体に認定、国宝重要無 形文化財 等保存・活用事業補助事業の国庫補助金を受け、制作技術の伝承と後継者の育成、そして社会的にも染織の世界に貢献する研究会を目標に研修を重ねていきた いと思います。
今回の竹筬京都展は16回目、その間に約100名の方に試作竹筬を提供して「試し織り」をお願いして、成果は少しずつ出ていますが、技術伝承と後継者育成は、まだ 道半ばです。「一つの技術で10年はかかる」と言われる竹筬製作で、10年続いた会員は極僅か、現状は西尾さんと篠崎さんが筬羽提供し、小嶋さんが仕上げと組みを 担当、次に続く小倉さん・向川さん・白髭さんに研修費を出し、後継者の育成をしていますが、まだ提供できるには時間を要します。職人さん達も全員亡くなられ、先輩 が後輩に習得した技術を伝え、結果から技術の良否を判断し研修を継続していますが、そのカギはやはり時間と継続による経験です。加えて新しい製作の発想と技術改革 だと思います。この部門を考古遺物のゲージ・マコ(真弧)用の筬羽を必要とされる会社の宮垣さんと機械化部門を作り、能率よく高品質な筬羽作りを目指して共同研究 しています。今までの技術や道具を使いこなすには時間と継続での経験が必要ですが、現役の後継候補の若者にその経験を重ねる時間と費用等を許さない現状があり、そ の現状変化がなければ後継者育成も出来ず、竹筬作成も途切れます。それを補うものとしての製作の発想と機械化での技術革新で、この事は実践されていた唯一の職人さ ん豊田義雄さんの実例が映像やお話で聞いており、それを目指して宮垣さんとは進んでおります。第一歩目が竹ベラ製作、竹材店からの購入では幅や厚み不足でまともな 竹ベラの入荷は望めず、会員が機械による節落とし・寸法切り・割り竹からヘギ竹へ加工・割りとヘギの機械改良には時間と工夫が要り、稼働には調整が必要ですが、職 人さんの竹ベラより会員の結果の方が最良です。次は押切からの羽切りから電動丸鋸で、将来的には義雄さん実践の二つ割り・幅取り・銑引きまでの機械化を目指して竹 筬製作の技術を確立し、竹筬希望者に提供できる研究会の体制を確立したいと思います。
「つむぎ」「絹通信」と長い間お読みいただき、ご意見・ご評価いただきました事、感謝申し上げます。

2020年1月22日  記   下村  輝