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絹糸の種類と作り方

◎生糸


 繭は基本的に1頭の蚕から1粒を作らせ、それを正繭といいます。その繭を繰糸して製糸した糸が生糸です。繭を煮て、通常は7〜8粒の繭から1本の糸を小枠 に巻いて繰糸します。普通蚕種の繭糸繊度は約3デニールですから、7粒で21デニールとなります。製糸には、手で繰糸する座繰りと、自動化された自動繰糸機 で製糸する機械製糸が有ります。
 座繰りにも、いくつかの種類が有ります。手で座繰り器を回して繰糸する上州座繰り(歯車式)、奥州座繰り(ベルト式)、足踏み式の諏訪式座繰りや、近江のダルマ糸などがあります。
 現在、自動繰糸機による製糸工場が山形県酒田市の松岡製糸株式会社、群馬県安中市の碓氷製糸農業協同組合の2か所。小型の自動繰糸機を持つ小規模製糸工場では 、長野県岡谷市の株式会社宮坂製糸と下諏訪町の山正松沢製糸所、愛媛県西予市の野村町シルク博物館が稼働しています。このうち宮坂製糸所では、諏訪式と上州式の 座繰り製糸も行われており、今年の8月からは新岡谷蚕糸博物館で動態展示操業が始まり、見学が自由になります。ほかに石川県白山市の牛首紬用の座繰り製糸、群馬県前橋市赤城座繰り、滋賀県長浜市の特種生糸などがあります。
 生産量の推移を見てみます。全国の養蚕農家は、1994年に19040戸だったのが2012年には571戸に減少しています。集繭量は1994年の7724t から2012年には202tに、生糸生産量は1997年の31500俵から2012年の500俵に減少しています。(いずれも「シルクレポート」より)

◎玉糸

 2頭の蚕が1粒の繭作りをしたものを玉繭といい、その繭を使用して繰糸した糸が玉糸です。主に上州式座繰り器で繰糸され、以前は生糸の代用で節のある安価な糸 、主に裏地などで使用されていましたが、自動化が難しく、玉繭の希少性、座繰り、手織り向けの風合いの良い味のある高価な糸になりました。生糸の生産量が1%弱の 国産繭の中から玉糸を集荷し繰糸することが困難なため、中国からの輸入が主流で、国産玉繭での玉糸は皆無に近いのが現状です。
かつては、愛知県豊橋市が玉糸製糸のメッカでしたが、今世紀の初めにわずかに残っていた玉糸の製糸場もすべて閉鎖され、現在は石川県白山市の2社(株式会社西山産業、 加藤改石手織牛首紬)と、岡谷の宮坂製糸所でかろうじて玉糸製糸が行なわれています。