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大麻繊維の話

大麻は(Hemp)は、クワ科の植物で苧麻・亜麻(あま)と共に古代より活用されてきた代表的な麻です。しかし、近年日本においては、 大麻の毒性の問題から栽培を厳しくし制限され、伝統的な活用目的の生産地として、栃木の鹿沼が有名です。 世界的には、気候に対する順応性が強い事から原産地のインド・ペルシャ、そして湿地帯・熱帯地方の各地に広く栽培されています。 主な生産地は、旧ソ連の各地・イタリア・ユーゴスラビア・ハンガリー・トルコ・中国 等です。

「栽培と品種」
大麻の品種には、薬用種・採油種・採繊維があり、毒性の有る物と無い物があります。大麻の葉は漢方薬(鎮痛剤)、茎は繊維を採り 製紙原料もしくは紡績用に使用します。近世紀以前には、伝統的な手行程により糸を紡ぎ、布を織り、衣服用もしくは資材用に使用されて来ました。 (太番手が使用されていました)近代になり、紡績原料としての開発が進み、特にここ30年程の間に細番手様に使用可能となり衣服用の開発が進みました。 種子は、オノミと呼ばれ香辛料として使用されています。

「大麻繊維の性質」
繊維は集合繊維として存在し、短繊維の断面形状は亜麻と良く似て見分けがつきません。生産された布は、柔らかさは亜麻に良く似ています。 大麻は、収穫時には、1−3mありますが、単繊維は短く5−55mm、平均20mmあり、太さは16−50μで平均22μです。収穫後は亜麻と同様に 醗酵法により繊維を採取する事が多かったのですが、近年では苧麻の精錬に準じて科学精錬を用いる様になりました。この方法を採用する事で衣類に 適した細番手用の原材料開発に結び付きました。しかし、現在でも麻番手60番以上の細番手は完成されておらず、伝統的に手工芸で生産された細番 手には及んでいません。

*注
古い文献によると、日本で麻といえば大麻の事を指し、苧麻は細紵(さいちょ)や麻苧(あさお)などと記載されています。また、苧麻で織ったもの は麻ではなく布と呼んでいます。苧麻も大麻も日本中で栽培されていましたが、律令国家が成立し租庸調制度が確立されるに従って、大麻より苧麻の ほうが付加価値高い品質の布を作る事が可能な事から、大麻は自家消費として、苧麻は貢納用との区別が出来たとされています。現存する上布は、 貢納用の名残と言われています。(現在では、夏の法衣などに使われている布は全てが苧麻となります。)亜麻は、元禄年間に渡来し、武州王子附近の 薬草園に栽培され薬用に栽培され種子の採取目的に使用したと言われています。明治7年駐露公使榎本武揚が、開拓使長官黒田清隆に亜麻の種子を送り、 北海道に試作させたと言われています。

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