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熊  本

天 草 更 紗
更紗は、「紗羅紗・皿更」とも表記し、語源はポルトガル語のサラシャ(木綿布)から命名されたと言われています。 室町時代に渡来し、更紗特有のエキゾチックな色柄が名物裂(めいぶつぎれ)として珍重されました。天草更紗は、オランダ人や京都の職人から染色技法を習得した金子為作と森伊衛門により文政年間(1818~1829)の頃に始められた とされています。その後、明治初期まで染められましたが、明治二十年代に途絶えました。昭和初期に中村初義氏により復興されました。現在その伝統は、初義氏のふたりの子息にうけ継がれています。当初の技法は、片面に型紙 を使って糊置きしていたそうです。

1)特徴
ペルシア、インド、オランダふうの鳥や草花模様が描かれた、異国情緒にあふれる古典調の更紗染です。色使いは、茶・黄・赤・緑・黒といった色調が多く用いられました。木綿や絹に染めて、着尺地や帯地として用いています。
2)変遷
更紗は、十五世紀の初期にも明(中国)との勘合船貿易により、わずかに渡来されたと言われています。本格的に輸入されるようになったのは南蛮船が渡来した室町時代末期(十六世紀中、後期)からです。当初は、渡来更紗を使用 していましたが、江戸時代も中期に、渡来更紗を模して、鍋島更紗・長崎更紗・堺更紗・京更紗などの和更紗が作られるようになりました。
3)染色法
楊梅(やまもも)・黄蘖(おうはく)・黒木などの植物染料に、紅殻(ベンガラ)・黄土(おうど)、ペレンスなどの鉱物顔料を用います。現在の技法は、生地の片面に型紙で糊置きをする方法ですが、かつては手描したものも、まれに存 在したと言われています。
4)技法
生地は木綿布を用い、それを三間半の長さの型板に型板糊を付けて生地を張ります。型付けは、生地に型紙をあてながら、防染糊の中に染料を混ぜた色糊で「へら」を使い、しごいていきます。使用される型紙は、その土地に残されて いる伝統的な更紗柄を伊勢型紙に模写しています。模様の部分が終わると、次に地色を抜きます。上から「おが屑」を振りかけた布を板から剥がし、蒸気箱の中に入れて約100度で20分間程蒸します。水洗して糊を落とし、仕上げをして完成となります。

肥 後 木 綿
現在の熊本市で、江戸中期に農村一帯において自家用として織られて来ました。純綿糸を藍染めし、素朴な縞模様の織物で丈夫な事が特長でした。