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静 岡
さざんさ織

節のある玉糸と真綿から手引きして紡いだ紬糸を使用し、絹でありながらウールのような地風の素朴な紬です。
静岡県浜松市周辺は、古くから「遠州織物」として知られていました。「さざんさ」の言葉の由来は、「浜松さざんざ」からと言われています。室町時代に将軍・足利義教が、この地を通った際に浜風にざわめく松を見て 「浜松の音はさざんざ」と詠み、この地を「浜松」と呼ぶようになったと言われています。昭和初期に、この事から浜松で織られる手織紬を「さざんざ織」と名付け、民芸運動家の平松実氏によって、遠州織物の伝統に 独創性を加えて確立していきます。
経糸・緯糸共に玉糸の節の多い糸を甘撚りしています。初期は、くず繭・玉繭から真綿を作り、手引きした紬糸を使っていました。現在では機械製糸を使用しています。太い糸の為、しなやかさを出すために煮沸に3時間 かけます。(糸の量は2割以下に減少します。)染色は、昔は植物染料が主でしたが、今は植物染料と化学染料が併用しています。製織は、平織・綾織(あやおり)の2種類があり、平織は着尺向き、綾織は羽尺やコート 地、帯地向きと使い分けて織られています。

1)平織
経糸と緯糸を一本ずつ交互に織った物。
2)綾織
綾織はタテ糸とヨコ糸が交互に交差することがなく、1本交差したら次は1本飛ばして交差する1×2や、さらに1本飛ばして交差する1×3などがあります。

葛布(くずふ)

*葛布(くずふ)
葛はマメ科植物で秋の七草の一つで、葛布は葛の靭皮(じんぴ)繊維を織り上げた布の事です。日本での葛布の歴史は、綿や麻が大陸から入ってくる以前に身近にある植物の蔓や茎 等から繊維を取り出し、編んだり織ったり して布を作りました。(芭蕉布・葛布・しな布を三大古代織と呼びます。)そして、古墳時代前期の「菖蒲が浦古墳」から出土した鏡に付着した葛布は、日本最古と言われています。そして、静岡県掛川市に鎌倉時代から伝 わる掛川葛布は「くずふ」・「かっぷ」と呼び、蹴鞠の指貫さしぬき(奴袴)に使用されました。江戸時代に入り東海道の掛川宿の繁栄と共に葛布も栄え広く世間にも認知され、裃地・乗馬袴地・合羽地 等として使用され、 参勤交代の諸大名の土産品として珍重されていました。