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「本朱子」と「黄八丈」 |
*本朱子 朱子織(しゅすおり,繻子織とも書く)は、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)五本以上から構成される織物です。 織物は、1)平織(plainweave) 2)綾織(twill weave) 3)朱子織(satin weave)からなります。朱子織は、縦糸または横糸が並列して飛び飛びに組織点をもつ、地合いの柔らかい織物であると言われています。 縦糸、横糸の交錯点が非常に少ないので、表に縦糸か横糸だけが現れ、横糸または縦糸はほとんど目立ちません。表面の糸が規則正しく並行に並んで、浮いていることが特徴です。美しい光沢で感触が滑らかですが、組 織力が弱く長持ちしない弱点が有ります。つまり、経・緯どちらかの糸の浮きが非常に少なく、経糸または緯糸のみが表に表れているように見えます。密度が高く地は厚いが、斜文織よりも柔軟性に長け、光沢が強く織 られています。但し、摩擦に弱いという欠点があります。 例えば、京都の丹後産の繻子織は後染め、京都市の西陣産の繻子織は先染めというように、同種の織り方でも産地によって染めの手順は異なることがあり、注意 が必要である。 注: 1)平織(plain weave) 縦糸と横糸が1本ずつ交互に交錯している組織です。最も簡単な組織ですが、縦糸、横糸の交錯点が多いので組織力が優れています。地合いは硬くなりますが耐久性に優れ、実用的な織物で最も多く使われています。 2)綾織(twill weave) 綾文織とも言います。縦糸または横糸が2本以上並んで、横糸や縦糸に交錯して組み合わされている組織です。斜めの方向に畦が現れることが特徴となります。地合いが柔らかで伸びやすく、皺寄りが少なく自由感があっ て着心地が良いと言われます。組織力は劣り平織に比べ耐久性は劣ります。 *黄八丈 黄八丈(きはちじょう)は、八丈島に伝わる草木染めの絹織物です。島に自生する植物の煮汁で「黄色、鳶色、黒」に染められた糸を「平織り又は「あや織り」に織り、縞模様や格子模様を作ります。 無論八丈島が本場で す。しかし、まれに秋田県でもハマナスなどを原料とした染料を用いた「黄八丈」が織られています。その八丈を「秋田黄八丈」呼び、そして八丈島で生産される八丈を「本場黄八丈」と呼んで区別しています。八丈刈安 (コブナグサ)で染めた明るい黄色の色彩が特徴となります。現在は伝統的工芸品として国の指定を受けています。 鳶色が主体になったものは茶八丈、黒が主体のものは黒八丈と呼ぶ事も有ります。しかし、黒八丈には同名の別の絹織物が存在するので混同しやすいそうです。 黄八丈という名称は、戦後になってからよく使われるようになったといわれています。以前は「八丈絹」「丹後」と呼ばれていたそうです。伊豆諸島では、八丈島の他に三宅島でも独自の絹織物が製造されています。三宅 島のものは三宅丹後と呼ばれています。 ー歴史ー その昔、本居宣長が「八丈という島の名はかの八丈絹より出ずるらむかし」と書き残しました。島の名の由来とも言われる黄八丈については室町時代から絹を貢いでいた記録があり、江戸時代の中期以後から現代にも通用す る粋な縦縞、格子縞が織られるようになりました。 注;「黄八丈の色」 黄八丈の印象的な黄色は、他の地方では雑草扱いされるコブナグサというイネ科の一年草から取れる。他の草木に比べて群を抜いて美しい黄金色を染め出すことから、八丈島では本土で古くから黄色の 染色に使われるカリヤスにちなんで八丈刈安と呼んで大事に栽培されている。これを用いて秋の初めに糸を染め始め、椿などの灰で「灰汁付け」(媒染)する。鳶色はタブノキの樹皮が原料で、何度も染液に漬けては乾燥さ せて赤みがかった濃い茶色を染める。黒色はいわゆる「泥染め」(鉄媒染)で得る。スダジイの樹皮で染めた糸を自然の沼で「泥付け」して泥の中の鉄分とスダジイのタンニンを結合させることで黒が得られる。ちなみに泥 染めで黒を染めると糸が脆くなり易いため黒染めの古布は現代に伝わりにくい。 |