戻る |
「絹通信#5」より 11月18日、今里哲久さん、西尾一三さん、角浦節子さん、下村輝の4人で新潟県小千谷の織物組合へ出発、重要無形文化財・越後上布・小千谷縮布技術保存協会の方達と、加えて平成5年に廃業された地元の筬屋・伊部敏雄さんを交えて調査及び我々の実技報告、そして意見交換いたしました。無形文化財指定の織物は地機で竹筬を使用、その竹筬は両産地の織物紋様合せの精度の考慮からでしょうか、高機用の精度の高い岐阜県祖父江の竹筬と同じです。両産地に「からむし(苧麻)」を供給している福島県昭和村では、地機で昔ながらの地機用竹筬を今でも使用していることを考えますと、筬はその地の織物によって筬の種類・精度が違っています。小千谷と越後の苧麻の糸績み方法は同じ、しかし宮古や石垣とは少し違っていました。竹筬は糸の特徴、すなわち結び方も含めた糸作り、より掛け、ノリ付け、地機か高機、精度も織物産地により違います。それに合わせて竹筬を製作してこそ、本当に応えた事になると思います。小千谷縮は縮ゆえ、麻ですが糸を濡らして織りません。しかし越後上布は濡らして織ります。ゆえに竹筬羽に付いたノリ落しのため、製織後、お湯を使いブラシで筬羽を洗うとの事でした。このことは筬羽を供給していた岐阜でも想定外だったのでは、伊部さんが赤焼の筬羽を使用ということは少し理解できました。越後上布では筬羽のくせが出た竹筬は使いたくないのは、精巧な亀甲絣紋様が合わせにくく、時には合わせられないからです。普通のタテ絣やヨコ絣なら十分でしょうが、十字絣、点絣、精密な絵絣になりますと筬羽のくせ、歪みは許されない事になり、研究会の最終精度の目標、大島紬(絹)、宮古上布(苧麻)、今回の竹筬にとって過酷な使用の越後上布(苧麻)の試織結果が可といわれた時、本当に竹筬が甦ったといえると思います。その目標を持ちつつ、一日も早く皆様へ竹筬がお譲りできるよう研修を重ねたいと思います。3月13日?15日の「試作竹筬による織布展」岐阜県瑞穂市へ是非お出かけ頂きたいと思います。 現在、研究会では修理や組替えは受付中。竹筬は約20名の方達に試織依頼、その結果発表が3月の「試作竹筬による織布展」その後に販売が見えてくると考えております。インターネットや他の情報で竹筬販売を耳にします。その竹筬は誰が試織したか尋ねて購入を考慮してください。「竹筬」という事だけで購入は要注意です。まだ多くの問題点があると我々は考えております。いろいろな竹筬の情報、お知らせください。 (2008.12.18 下村輝 記) 「絹通信#4」より 竹筬研究会が発足して6年、賛助会員や準会員、また会員ではなくても古い竹筬資料の提供、いろいろな竹筬の情報の提供、ご意見やご助言をいただいた皆様へ、直接、会の活動や会計を報告する手段は持っていませんでしたが、9月に会報「竹筬」第1号が創刊でき、今までお世話になりました皆様へお送りすることができました。年1回の発行予定ではありますが、20年度はもう1回「竹筬と織物展(仮称)」の臨時号を発行いたします。 現在試作中の竹筬による試織をお願いしている約20名の染織家の方達の織物をお借りし、併せて会員による試織織物による「竹筬と織物展」を2009年3月13日(金)?15日(日)、研修地である岐阜県瑞穂市の総合センターで開催いたします。年内にはほとんどの方の試織結果が出、その結果をふまえて、具体的に内容を決定し「竹筬と織物展」を成功させたいと思います。そして次なる目標、竹筬を譲れる体制作りへと進んでいきたいと思います。 現時点では「竹筬と織物展」のサブタイトルで「甦る竹筬」という案が出たのですが、お教えいただいている職人さんから、まだ100%甦った技術レベルの竹筬ではないので、「甦れ!竹筬」になりました。プロの職人さんから見れば、あと少し頑張りなさいという厳しくもあり、ありがたいご意見であり、研修生一同、3月の発表会めざし、さらなる努力をし「甦った竹筬」と言っていただけるよう毎日の研修を重ねねばと思います。ただ試織をお願いしている方達からは、問題はなかった、あるいは譲ってほしいとの良い結果のご返事もいただいており、研究会のレベルが、ほぼ使用に耐えうる実用的な竹筬になりつつあることも実感しており、希望を持って3月に向かって進んでおります。 会報の創刊号(コピー)を無料で送ります。ご住所とお名前をお伝えください。 (2008.10.22 下村輝 記) 「絹通信#3」より 7月9日、福島県会津のからむし織の里・昭和村へ竹筬の調査も兼ね特別講習で訪ねました。昭和村は竹筬研究会が竹筬を依頼されている越後上布・小千谷縮にからむし(苧麻)を栽培し提供している本州における唯一の生産地です。上布といわれる繊細な織物は越後と小千谷といった織産地で昭和村の苧麻を苧績みし織られていますが、その昭和村では素朴な昔のからむし織が残っていました。からむし織の里のからむし工芸博物館ではからむし織に使用されている地機と竹筬を拝見、昔ながらの地機専用の竹筬が修理をしながら実際に織姫交流館や地元の方達のからむし織に使用されています。それに近い竹筬は以前名古屋の九鬼良孝さんより提供され、その地機の竹筬が現在実際に使われていた事実は驚きで、そのことは帰りに寄った文化庁の文化財調査官の方々にもお伝えしました。越後からの試作竹筬のための参考竹筬が現在の高機用と同じでしたから、もう一度地機用の竹筬は見直さないといけないのではと思います。竹筬研究会の今後の研究として、地機用の竹筬復興も課題になりそうです。昭和村からむし生産技術保存協会から、地機用の竹筬修理を依頼され、その修理技術も研究会の課題になりそうです。その資料として昭和村在住の会津地方で百年、2百年の古民家解体と再生普及そしてペンションをしておられる會津古木屋の小林政一さんに会津地方の地機用の竹筬・カマチ・長刀杼を依頼し、それらは現在出所も含めて研究会に届いております。そんな今回の昭和村の成果を持って、越後上布・小千谷縮への竹筬調査復興へとつなげていきたいと思います。小林さんには古い地機や機道具も探していただけ、またご夫婦には野生の日本茜を苧麻同様、畑での栽培をお願いして帰ってまいりました。 ■竹筬に関するご要望ご意見をお聞かせ下さい。 連絡先: Tel&Fax 075-313-1348 E-mail takeosa200307@yahoo.co.jp 現在、竹筬研究会では技術の伝承から、より具体的な竹筬を譲れる状態になりつつあり、その一つの区切りが来年3月13日(金)?15日(日)の試作竹筬による織物展で、すでに試織された方より竹筬を譲って欲しいといわれておりますが、もう少し試織回数を重ねてからと考えております。それまでの半年間に出来つつある竹筬をどうするのか検討中ですが、皆様のご意見もぜひお聞かせいただければ幸いです。 2008.8.22 下村輝 記 「絹通信#2」より 京都相国寺承天閣美術館での105歳で亡くなられた山口伊太郎さんの遺作展・源氏物語錦織絵巻の期間中に特別企画された「人ともの」の物語講演会の中で竹筬研究会は6月5日より1週間、原料竹材・工程別の製作竹材・研究会員による試作竹筬・修理竹筬・アジアの参考竹筬を展示、併せて岐阜県祖父江に残っておられます職人さんたちがご使用になった正直台をはじめとした道具類の展示、それを基に復元し、現会員が使用の道具類も展示いたしました。とくに7日と8日は会員・角浦さん、今枝さん、西尾さんによる実技講演を実施、8日はさらに特別会員・大橋さんによる竹筬修理のお申し込みも受付け、丹波青垣町の丹波布伝承館の方たちからは試作竹筬による試織のご希望もあり、来年の「竹筬と織展」に広がりができました。加えて、以前沖縄を主として竹筬のアンケート調査を会場でも実施でき、改めて竹筬研究会の活動や現状を公開し、広く染織の方たちと交流でき、竹筬のことを良く理解していただけた1週間だったと思います。特別展ではわれわれ研究会の活動に加え、信州岡谷より製糸の宮坂照彦さん、糸染色の岡本芳明さん、私は絹糸とねん糸と道具の話し、普段なかなか聞く機会のない職人さんたちの実技を含むお話があり、源氏物語錦絵巻の鑑賞と併せて充実した1週間でした。 ※7月2日よりは会員であり、現在、奄美大島紬の研修生であり、竹筬研究会ホームページ担当の鳥居さんが奄美で竹筬の写真展をいたします。 注:奄美大島での写真展は7月22日から行いました。 ※7月9日には福島県昭和村の依頼で竹筬の現状と報告会をいたします。9月15日、16日の第8回東京スピニングパーティーでは、竹筬を含む道具の紹介にも力を入れたいと思います。 (2008.6.20 下村輝 記) 「絹通信#1」より 竹筬研究会も6年目、ホームページでも情報をご覧いただけます。今年の目標は試作竹筬による約20名の方達による試織織物を地元の岐阜県瑞穂市にて「竹筬と織物展」を開催する事、そのための竹筬作りに向けて会員各位、研修を重ねております。その裏付けとなる20年度の芸術文化振興基金の助成金も300万円の内定を受け、織物展がより具体化でき、竹筬復活への手応えを皆様に知っていただく最良の方法と考え計画いたしました。加えて職人技、技術の要点を書き取り、新たな後継者の方達のテキストとなる「竹筬作りの覚書」と映像記録作り。また重要無形文化財保持団体の越後上布・小千谷縮布、久留米絣への竹筬調査と竹筬作り。特に久留米絣につきましては、竹筬羽を使った絵絣用の種糸台の製作も今年の目標として取り組んでいます。 研究会の現在の竹筬の現状と報告は、まず5月24日、25日の信州の松本クラフトフェアで下村ねん糸が情報資料コーナーに出展。6月に入りますと、6月5日より約1週間、竹筬研究会は、その中の7日(土)8日(日)は実技報告、特に8日は特別会員の筬組み職人・大橋さんによる竹筬の修理も受け付けます。会場は京都市内の相国寺承天閣美術館で4月27日から7月6日まで開催されている「山口伊太郎(105歳)遺作展・源氏物語錦絵絵巻』展に隣接した二階講堂です。 (2008.4.15 下村輝 記) |