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三河ガラ紡の歴史

ガラ紡績機の独創性
洋式紡績機は、紡錘による撚り掛け引き伸ばし(スピンドルドラフト)、または回転速度の異なるローラーによる引き伸ばし(ローラードラフト)と撚り掛けといった方法を取ります。いずれの場合も、精紡する ためには混打綿から粗紡までの前工程で多くの機械を通して粗糸(そし)を作る必要があります。このため工場の規模は大きくなります。
ガラ紡績機は、回転する綿(撚子)から直接糸を紡ぎ、天秤機構によって撚り掛けと引き伸ばしを自動制御するという理論です。しかし、この方法では、前工程は省略できるものの、均質な糸の紡ぎ出しが難しいとい う欠点があります。
(ガラ紡績機および同機による精紡のしくみについては玉川寛治「ガラ紡精紡機の技術的評価」『技術と文明』第3巻1号、1986年を参照)。


ガラ紡工場の生産システム

ガラ紡工場では一般に原料綿を混綿したりほぐしたりする「ふぐい」と呼ぶ機械が1台、綿繊維を揃えて引き伸ばす打綿機が1台、打綿された綿を「つぼ」に詰めるために棒状の綿に巻く「撚子巻き機」が1台、 そして1台8間512錘(片側256錘)のガラ紡績機が2台、さらに出来上がった糸を数本合わせて合糸する「合糸機」が1台、合糸した糸に撚りを掛ける「撚糸機」1台を設備しています。このようにガラ紡工場は、 工場内ですべての作業工程を行うことができる一貫工場とも言われています。動力源は、当初水車が使われましたが、昭和期に入ると電動機の導入が進み、その比率は1940年(昭和15)には電力利用工場が水 力併用をふくめると70%を超えるまでになります。


ガラ紡績の原理
紡績の基本作業は
@ 繊維をそろえる
A 繊維を引き延ばす
B 繊維によりをかける
C 出来た糸を巻き取る  となります。

又、紡績に必要な機能は、「@糸の太さA糸の太さのむら、B糸切れ」です。ガラ紡績機ではあらかじめ綿打ちされて繊維のそろえられた綿を棒状にして綿筒(つぼ)に入れ、駆動軸からハヤ糸により遊合(ユ ーゴ)に回転を伝え、遊合から羽と呼ばれるツメを介して綿筒を回転させ、引き出される糸に撚りをかけます。撚りが強くかかりすぎて、糸が太くなると綿筒は上方に上がり、羽根がはずれ、面筒の回転は止ま る。撚りがかからなくなるので、糸は引き伸ばされ一定の太さを保つことができます。よって、少しずつ綿筒内の綿が減り、綿筒の重さが変化するので糸の太さを一定にするため、天秤の重りの位置を変えて 調節しています。(臥雲辰致は、支点に近づくよう付け替える。後に現 豊田市在住の中野清六は、手回しねじにで調整する。)昭和初期、足助町在住の深見喜太郎により歯車機構を取り入れ、支点の自動調節機構を考案します。