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人類が衣服を着たのは、10万年前

人類が衣服を着たのは、10万年前の後期旧石器時代の第4氷河期頃と言われています。当時の衣服は、食料用に狩猟でた毛皮でした。
古代人の布を作る技法は、織布と編布の2種類があります。 布を織る織物の原理は、綜絖(そうこう)という工具を使ってタテ糸を交互に上げ下げし、その間にヨコ糸を通すという作業の繰り返しによって布を作ります。この時代は、まだ綜絖がなく1本の糸を編み 棒で絡ませる編み物で布にし、タテ糸とヨコ糸を別々に用意し、用具はケタとコモヅチを使用し、交互に絡ませて布を作るという単純な作業でした。また、織物よりも編物が先行し、縄文時代人は編物が中 心であった事が最近の遺跡の発掘調査で明らかになってきました。そして、縄文時代に衣料繊維の使用が始まり、弥生時代になり急速に広まったと言われています。
この時代の植物衣料繊維は、自生の楮 (コウゾ)・殻(カジ)・科(シナ)・山桑・山藤 等の樹木皮やオオアサ(ヘンプ/大麻)・葛・イラ草 等の草木皮を剥ぎ、細く裂いて使用していました。やがて、稲作が行われる時代になると麻の一 種の苧麻・桑・蓮 等を栽培し、柔軟な繊維を取り繋ぎ合わせ細くて長い糸を作り、その糸を経糸と緯糸に組み合わせて織ったり編んだりして衣服を作りました。動物繊維である絹糸は、自生していたクヌ ギ・ナラの葉を食べる天蚕(山繭)を使用していました。
日本では、綜絖が約2000年前の弥生時代に大陸から伝わり、織物が始まりました。弥生時代前期の農耕・稲作技術の伝来と同時期に、桑の葉単 食種である「家養蚕」技術も伝えられ、農耕飼畜経済の発展に伴い男女の仕事分担化が進み、養蚕の技術も発達して女性中心の仕事となりました。

麻は、最初に人類が栽培した植物です。

麻の種類は20種近くあり、同じ麻と呼ばれる繊維でも原料となる植物が異なれば性質が異なります。エジプトでは、紀元前10000年頃にリネンが栽培され、衣料に用いられていたと言われてい ます。
(エジプトのミイラが麻布で包まれています。)
日本では、代表的な麻である苧麻とオオアサ(ヘンプ・大麻)が縄文時代の遺跡に痕跡があり、福井県の遺跡から縄文時代初期に利用されていた麻が 出土し、静岡県登呂から弥生後期の麻の織物が出土しています。絹は、弥生時代に朝鮮半島から伝来しました。羊毛は、製品として奈良時代に伝来しましたが、羊毛生産の時期は不明です。また、江戸時代 以前の衣料用繊維は、苧麻・大麻・絹が使用されていました。当時の製織技術は、麻を密度高く織る事は困難で、かなり荒目のもので寒さをしのぐために重ね着が必要であったと思われます。そして、木綿 は江戸時代に普及し、亜麻は明治になってから導入されました。